トルコショックより大きな危機が、これから世界経済を襲う可能性

重要な局面変化に備えよ
唐鎌 大輔 プロフィール

世界経済の「寿命」を縮める同時多発的「投げ売り」

上述のようなPMIの動きからは「米国だけが好調なので利上げを進める」という構図の難しさを示唆している。

 

米景気の好調を理由にFRBが利上げを推進すること自体は筋が通っている。だが、その構図はドル建て資産の投資妙味ばかりが相対的に改善する状況をも意味する。その状況が極まっていけば必然的に新興国市場からの資金引き揚げが起きることになる。

それが「○○ショック」と呼ばれるほどの現象になるかどうかへ脇に置くとして、新興国市場からの資金流出それ自体は既定路線とさえ言える。

まずは今年上半期に、そうした米金利上昇の影響を真正面から食らったのがアルゼンチン、トルコ、ブラジル、南アフリカ、メキシコといった主に経常赤字の国々であり、特にアルゼンチンとトルコの下落幅は突出していたことは周知の通りだ(他通貨とはスケールが違い過ぎるため以下図では敢えて除外している)。

米金利が上昇する局面で対外経済部門の脆弱な通貨が手放されるのは歴史的に繰り返されてきたお馴染みのパターンである。

しかし、6月中旬に米国が中国に対する知的財産権侵害を理由に追加関税を課す方針を示して以来、貿易戦争懸念が強まり、新興国市場は上述したような「米金利上昇を理由とする売り局面」に加え、「米通貨・通商政策を理由とする売り局面」にも直面するようになった。後者の局面では中国、韓国、台湾、タイといった経常黒字が大きい国が標的になる。

要するに、「米金利対比での劣後感」と「貿易戦争への警戒感」が同時発生していることで、経常収支の状況にかかわらず新興国通貨が手放されやすい市場環境が醸成されつつある。ちなみに今年に入ってから、複数の新興国の中央銀行が利上げに着手しているが、これは「米金利上昇を理由とする売り局面」への対応策である。理屈としては理解できるが、そのような動きが同時多発的に生じれば、当然、世界経済の寿命を縮める方へ作用することになる

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