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日本でよく使われる「認知症薬」が海外で何度も論争を呼ぶワケ

最大の理由は、その歴史にある

認知症薬をめぐる論争

認知症の治療薬として使われている4種の医薬品が、フランスではこの8月から医療保険の適用から外れたという報道があった。

その4種類とは日本でも、認知症患者に対してよく使われているもので、ドネペジル(商品名アリセプトなど)、ガランタミン(レミニールなど)、リバスチグミン(イクセロンなど)、メマンチン(メマリーなど)である。

新しく命に関わる副作用が報告されたとか、調べ直してみると実は無効だとわかったというわけではない。

だが、有効性と副作用のバランスおよび価格を考慮すると、国民に対して医療保険で手厚くカバーするほどの有用性はないと見なされたのだ。

だから保険適用から外れて、フランスでは、効果があると思う人は使えば良い一種のオプション的医薬品とされただけで、使用禁止になったわけではない。

 

この4種の中でも知名度も高く認知症薬の代表ともいえるドネペジルについてはイギリスでも論争があったことが知られている。

2006年にイギリスの国民保健サービス(NHS)での診療ガイドラインのなかでは、ドネペジルを中等度の(アルツハイマー型)認知症の治療に用いることは認めたものの、軽度には不必要だとの評価となった。

これに対して、製薬企業と一部患者が反論して裁判となり、2011年には軽度と中等度の(アルツハイマー型)認知症の治療薬としてガイドラインに記載されるようになった。

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治療効果が強くなく、副作用もあり…

認知症の患者数は2025年には日本で700万人、65歳以上人口の5人に1人と推定されている(厚労省)。

ただし、この数字はちょっと「盛り過ぎ」ではないかとの意見もある。

なぜなら、2010年代から認知症の患者数のなかには、それまでは健常な老化と認知症の中間でグレーゾーンとされてきた「軽度認知障害(MCIと略すこともある)」までも含まれる統計の数え方になったからだ。

軽度認知障害の人たちの中には、物忘れが悪化して認知症に進行していく人もいれば、軽度な状態のまま日常生活をなんとか続けながら年老いていく人もいる。

そのため、人数はやや多めに推定されているのかもしれない。