『未来の年表』著者が日本より急激に少子高齢化する台湾で訴えたこと

出生率は7.04から1.13へ急降下
現代新書編集部 プロフィール

続いて登壇した前出・李玉秋氏は、「早めに資産運用・積極的な投資をしよう。熟年世代は、子孫へ資産をうまく伝承しよう!」と述べた。

かたや、若干の休憩時間(会場では数種類のケーキなどが提供された)を挟んで壇上に登った商周集団CEOの王文静氏は、自ら70ヵ国を旅してきた経験を交えながら、いつまでも心を若く保ち生活を豊かにする知恵を語った。

自らの旅の映像を流しながら、「旅をしない人は、ダメなんです」と活き活きと語り、持ち時間を大幅に超過する。

 

空き家は増え、大学は経営難に

こうして、少子高齢化を巡るそれぞれの講演が終わった後で、「サミット対談」が行われた。参加者は、河合氏の他に、薛瑞元・衛生福利部常務次長、薛承泰氏、王文静氏、李玉秋氏である。

サミットは一段と熱気に包まれた(商業周刊提供)

はじめに河合氏は、「少子高齢化が日本経済に影響を与える問題を3つあげるとしたら、何でしょうか?」と問いかけられた。

「1つは、経済成長そのものがかげってくること。成長分野が生まれて来なくなる。新しいアイデアや発想がなかなか出て来なくなる。また、人口が減少する地方は食料生産の基地であるから、食料が賄えなくなる。3つ目として、経済成長がないところでは少子化が止まらないこと」

そう応じると、登壇者から「どれも台湾でも起こりうると思う」との声が発せられ、他の登壇者もうなずく。その後も、それぞれの立場から様々な意見が上がった。

「医療・介護のリソースが減るのだから、健康に長生きすること、認知症にならないこと、できるだけ生活機能を保つことが重要だ」
「台湾は住居の所有率が8割以上と日本よりも高い。これから死亡者が増えると、空き家が増えることが懸念される。また、学生が減るから、大学は経営難になるだろう」
「高齢者の住居のデザインをこれからつくらなくてはならない」

そういえば、台湾も日本と同じように、マンションをつくりすぎて余っているという話を、河合氏の通訳を務めた簡甄儀さんから聞いた。超高層ビル・台北101からは夥しい数のマンションが眺められたが、これらもいずれ老朽化して空き家が増える。

台北101から台北中心部を眺める

ペットビジネスが普及している

一方で、高齢化をポジティブに考えると、新しいビジネスチャンスではないのか。どのようなビジネスチャンスが日本では出てきているのか? という問いかけに対して、河合氏はこう答えた。

マーケットが高齢者向けの商品開発にシフトしています。たとえば、乗り降りのしやすい自動車の開発。タクシーは乗り降りの簡単なクルマに置き換わっています。介護の分野では、歩行のサポートをしてくれるロボットスーツや介護そのものをしてくれるロボットリフトの研究開発も進めている。

また、高齢者向けの保険商品、金融商品の発売が目立ってきました。75歳以上の投資家向けの営業チームがつくられはじめました。若い頃のような理解力はないでしょうから、かなり丁寧に情報を説明するよう変化してきています。

もう1点。日本ではかなりペットビジネスが普及しています。子供がいない人や独り暮らしの人が、話し相手としての需要が伸びている。ペットの学校、学習塾のようなものまでできていますね」

会場の参加者も、新たなビジネスヒントを見つけたといわんばかりに、興味深く聴いていた。フォーラムの最後、薛承泰氏が、

「死ぬ2週間前まで衰えない生活が一番いいんです。台湾では、女性の未亡人は男性の未亡人の3倍。女性は残された遺産を使いたい放題ですね(笑)」

と冗談めかして締めくくり、盛大な拍手とともに幕を閉じた。終了後、河合氏はサインと写真撮影を次々と求められたのだが、台湾の人々は写真撮影が本当に好きなのだな、と微笑ましく思って二人で会場を後にした。

フォーラムの翌日、私たちは国立故宮博物院に案内してもらった。悠久の歴史を感じさせる無数の逸品にため息がこぼれるばかりであったが、そこに展示されている一流の芸術品、翠玉白菜肉形石を眺めながら、私はつくづく思った。

河合氏は少子高齢化対策として、少人数の村でもよいから高付加価値の商品を生産して豊かに暮らせるようなヨーロッパ型社会への転換を提案している……こんなに美しい翠玉白菜や肉形石を産み出せる、キラリと輝く日本に変われたらいいのに!

人口減少・少子高齢化という問題に日本がどう立ち向かい、どう解決してゆくか――世界の眼差しが次から次へと注がれ始めている。

今回のフォーラムについての、商業周刊の記事はこちら

※このたび河合雅司氏を招き、もてなしてくださった「中国信託商業銀行 商業周刊」ならびに「究竟出版 圓神出版」の皆さま、講演者の皆さま、通訳を務めてくださった簡甄儀さま、その他大勢の関係者の方々に、この場を借りて多大なる感謝の意をお伝えいたします。