『未来の年表』著者が日本より急激に少子高齢化する台湾で訴えたこと

出生率は7.04から1.13へ急降下
現代新書編集部 プロフィール

それに続けて、『未来の年表』は50万部のベストセラー、『未来の年表2』も20万部を超える勢いだ、と述べた時、会場がどよめいた。台湾では1万部売れればベストセラーになると聞いていたが、日本でもここまで売れる新書は滅多にない。

河合氏が日本の現状を解説していく。出生数が100万人を割って、最も多かった時代の270万人から3分の1に減ったこと。少子化の意味は2つあって、子供の数が減ることとに加えて、次の子供を産む女の人の数が減るということ。日本はあと40年で7割、100年で半分の規模の国家になってしまうこと……。

 

河合氏の話に熱がこもる。「台湾の10年後くらいの未来図が日本にあります」。

若い高齢者はすでに減っていて、80歳以上の人たちが増えていく。ひとり暮らしの女性が増えていく。2040年になると、女性の4人に1人はひとり暮らしになる社会が来る。外国人労働者、AI……政府の進めているような政策は切り札にはならない。

熱心に語りかける河合氏(商業周刊提供)

「今から25年間で、働く世代が1500万人も減ります。これを外国人労働者で賄おうとしても、当てがありません。なぜなら、この先諸外国も少子高齢化を道を歩むからです。若い人が減っていく諸外国が、わざわざ日本にどんどん若者を輩出するでしょうか? 一方、AIの発達も、人口が減るスピードにはなかなか追いつきません」

「小さくなったって、けっこう!」

会場の参加者は熱心に聴いている。信じられないと言わんばかりに、目を丸くして見開いている人に、黙々とメモを取っている人。これだけの現実を突きつけられれば、外国のこととはいえ、他人ごとでは済まされないだろう。

では、どうすればいいのか――とりわけ参加者が大きな反応を示したのは、「戦略的に縮む」という対策を語る時だった。

「人口が減っていくことは止められません、台湾も日本も。人口が増えるには100年、200年かかるでしょう。だったら、縮むことを受け入れようじゃないか。そのうえでどうしたらよいかを考える。こうした発想の転換をせざるを得ません。

多少小さくなっても、豊かな社会をつくることができるのではないか。たとえば、便利過ぎる社会を見直すこと。コンビニは24時間空いている必要があるのか? 荷物はすぐに届くが、そこには数多くの労働力が割かれている。そんな労働に若い人を割くのではなく、成長分野に若者を寄せ集めないといけないではないか?」

日本は追い込まれている。これからはひとり当たりのGDPを伸ばしていかなければならない。労働生産性を上げていくことは人口減少社会で不可欠だ。そして、持ち時間30分が経つことも参加者が忘れているうちに、こう締めくくった。

「問題を解決するためには、子供がたくさん産める国に戻さなくてはならない。少子化対策の秘訣がひとつだけあるとしたら、若い世代の人が未来に希望を持てるようにすること。小さくなろうとも、豊かさは維持できるんだというメッセージを、今の世代が次の世代に胸を張って語り続けることがポイントなんです。

台湾のみなさん! 台湾は日本より少し遅く人口減少が始まっていきます。しかし。人口規模が日本よりも少ないため、いったん始まってしまったら、日本よりも早いスピードで社会の激変期がきます。変化を恐れずに、変化に合わせて、自分たちの未来を切り開いていきましょう。

小さくなったって、けっこう! どんどん思い切って小さくなろう! その代わり、もっともっと立派な社会をつくりあげる。未来にそれを語り継ぐ。これが今日皆さんにお伝えしたかったことであります。ご静聴ありがとうございました。謝謝」

 

1人の高齢者を1.2人で支える

講演は盛大な拍手に包まれて終わった。日本の少子高齢化という課題が、外国とリアルに共有された初めての瞬間であったかもしれない。正直に言えば、この30分足らずの基調講演に、私の心は大いに揺さぶられた。

だが、その河合氏に引き続いて登壇した台湾大学教授・薛承泰氏の話も、驚きの連続であった。

「国連によると、世界の人口は2010年で70億。そのうち約20億人が子供です。今後、世界全体の人口は110億まで増えていきます。しかしそれでも、子供は20億から増えないのです。

台湾の人口は2360万人。2050年には1900万人まで人口が減ります。日本よりも早いペースで少子高齢化が進みます。2060年、高齢者人口は40%を超える。10人の中で4人が高齢者です。これは必ず起こる趨勢です」

日本の人口の約5分の1だからこそ、いちど人口減少が始まると、急坂を転げ落ちるように進む。会場に大きく映し出されたグラフを見ると、1980年には、1人の高齢者を15.8人で支えていたのが、2060年には1人の高齢者を1.2人で支えることになる。

注目すべきは先にも述べたように、出生率の急激な低下だ。1951年は7.04だったのが、昨年は1.13になった。薛氏は「世界の奇跡かもしれない……」とアピールした。

そして最後に、自分の刊行した『台湾版未来年表』は、『未来の年表』と違って、1000部しか売れなかった、と苦笑いして、会場を爆笑の渦で締めくくったのだった。