「30過ぎたら家を買え」は、一種のマインドコントロールだった

家賃を払うよりトクでしょ?は甘すぎる

家賃をめぐるセールストークのトリック

「ちょっと待ってくれ!太郎さんは持ち家だからいいけど、花子さんは賃貸だから家賃を払わなければならないはずだ。それはどうなってるの?」と、ここで疑問を差し挟む人もいるかもしれません。

これは一見、正論のようです。しかし、ほんとうでしょうか。

不公平にならないように、花子さんは太郎さんが買ったのと同じ、5000万円相当の不動産を賃貸で借りるとしましょう。家賃はいくらでもいいのですが、ここでは仮に年250万円(1ヵ月約20万8000円)とします。現在の東京の家賃相場からいっても、妥当な設定でしょう。

 

さて、この状態であれば、たしかに太郎さんのほうが花子さんより有利なような気がします。花子さんは年に250万円ものお金を大家さんに払わなければならないのに、太郎さんは無借金の持ち家ですから、何のお金もいりません。そのうえ手元に5000万円相当の不動産まであるのですから、勝負は決まったようなものです。これも、不動産営業マンの殺し文句です。

こうしたセールストークのトリックを見抜くのは、じつはそんなに難しいことではありません。

たしかに太郎さんの手元には5000万円相当の不動産があるとしても、花子さんの手元には、同じく5000万円相当の有価証券があります。花子さんがこの資産をギャンブルやホストクラブで蕩尽してしまわないかぎり、太郎さんと花子さんの資産価値は同じです。

ここまでは誰でもわかります。では、花子さんが支払って、太郎さんが支払わなくてもいい家賃は、どう考えればいいのでしょう。

太郎さんと花子さんのバランスシートそのほかの条件はまったく同じですから、花子さんだけが一方的に、年間250万円も余分に払うのでは不公平です。そこで太郎さんも、花子さんと同様に250万円の家賃を支払っていると考えてみましょう。これではじめて、2人の立場は対等になります。

でも、これでは現実に合いません。だいいち、現金のない太郎さんには、家賃分の250万円を支払うお金がないからです。

となると、現金を持っていない太郎さんにも、250万円のお金を稼げるようにしてあげる必要があります。

そのお金はどこから来るのかって?

太郎さんは資産として不動産しか持っていませんから、250万円のお金は、太郎さんが買った不動産から生み出されるしかありません。

不動産の購入価格が5000万円、それが生み出すお金が年250万円ですから、5%の利回りということになります(250万円÷5000万円=5%)。つまり、太郎さんは不動産を買ったことで年間5%=250万円の利益を得、その利益で年間250万円の家賃を支払っているわけです。

誰に払うのかって?もちろん、太郎さん自身に払うわけです。

それに対して花子さんは、金融資産から得るであろう250万円の現金を、赤の他人の大家さんに払っています。