サラリーマンとは一味違う「マイクロ法人」という生き方をご存じか

こんな方法があったとは…

マイクロ法人とはなにか

ところで、先に「会社には法律上の人格が与えられる」とあっさり書いたけれど、私はこの意味がずっとわからなかった(正直に言うといまでもよくわからない)。近代の市民社会は個人(市民)の人格を等しく認め、それを人権として社会の中心に置いた。

だから、私やほかのひとたちが人格(パーソナリティ)を持っていることは理解できるけれど(これが曖昧になると精神病と診断される)、法律上の人格っていったいなんだろう。

本書のもうひとつの主題は、「法人」をめぐる謎である。その不思議を解明しようとして自分で会社をつくってみたのだが、その結果、事態はさらに複雑化してしまった。私の会社には株主と取締役が1人しかおらず、それはもちろん私自身なのだが、この会社は、私(個人)とは独立した法人としての人格を持っているのだ。世の中にこんなヘンな話ってあるだろうか?

本書では、こうした一人会社を「マイクロ法人」と呼んでいる。旧商法ではマイクロ法人は有限会社でしか認められず、株式会社では変則扱いだったのだが、新会社法ではアメリカなどと同様に、1人で株式会社を設立することが認められた。

 

会社に雇われない生き方を選択したひとたちを「フリーエージェント」という。1980年代以降、欧米など先進諸国で増えつづける新しい就業形態で、労働市場の流動化が進んだアメリカでは全就業者数の4分の1、約3300万人のフリーエージェントがいるという。

このフリーエージェントが法人化したものが、マイクロ法人だ。アメリカでは1300万社のマイクロ法人があり、1秒に1社の割合で自宅ベースのミニ会社が生まれている。

アメリカでは会社に雇われない生き方が一般化すると同時に、フリーエージェントのマイクロ法人化が進んでいる。彼らはべつに、第2のマイクロソフトやグーグルを目指しているわけではない。会社に所属するのではなく自分自身が会社になるのは、そのほうが圧倒的に有利だからだ。

会社をつくることによって、個人とは異なるもうひとつの人格(法人格)が手に入る。そうすると、不思議なことが次々と起きる。まず、収入に対する税負担率が大幅に低くなる。さらには、まとまった資金を無税で運用できるようになる。そのうえもっと驚くことに、多額のお金をただ同然の利息で、それも無担保で借りることができる。

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こうした法外な収益機会は、本来、自由で効率的な市場ではありえないはずのものだ(経済学の大原則は、「市場にはフリーランチ(ただ飯)はない」だ)。ところが実際には、人格をひとつ増やしただけで、簡単にフリーランチにありつくことができる。

こうした奇妙な出来事は、国家が市場に介入することから引き起こされる。世界大不況で「市場の失敗」が批判されたが、じつはそれ以前に、国家が市場を大きく歪めている。

その最大のものは世界中の国家が好き勝手に貨幣を発行していることなのだが、それ以外にも市場には無数の制度的な歪みがあって、それによって理論上は存在しない異常現象が現実化するのだ。

アメリカのフリーエージェントがマイクロ法人になるのは、国家の歪みを最大化するためである。ひとことで言うならば、マイクロ法人は、国家を利用して富を生み出す道具なのだ。