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寿命が来るまで「資金切れ」にならないための、老後のお金の根本思想

3%で運用して、4%引き出す、が正解

定年後のお金について、本気で考えたことはありますか?いくら必要か、いくら引き出してもいいのか、どうやって運用すればいいのか――。フィディリティ退職・投資教育研究所所長で、『定年後のお金』を著した野尻哲史氏が、退職金についての根本的な発想について教えます。

人生の後半戦、どう戦えばいいのか

山登りは、上るよりも下りる時のほうが危険だと言います。人生を山登りにたとえるなら、50歳を超えた私たちは、資産を創る「山登り」を終えて、これから資産を使う「山を下りる」時期に近づいているとも言えます。

書店で資産運用の本を探すと、世間では「資産運用を始めよう」というメッセージが多くなっていることがわかります。しかし、それはほとんど若者のためのもの。定年間近になった私たちが切実に「必要」と感じること、すなわち定年を迎えた後、「資産をどう使っていくか」の指南書はありません。

「人生100年時代」といった流行り言葉はあっても、人生の後半戦をどう闘えばいいのか、持っている資産の寿命を少しでも延ばして、人生の最後の瞬間まで経済的に困らずに生き切る方法を教えてはくれないのです。

 

私自身、2018年の今年59歳となり、来年は定年です。最初に勤務した日本の証券会社は40歳目前の時に自主廃業。その後外資系に転職しましたが、そこも50歳前にやめて現在の会社で12年目を迎えています。「上り坂」で相当大きな紆余曲折を繰り返して、ついに坂の下り方を自分に当てはめてみる年代に差し掛かったわけです。

だからこそ人一倍、下り方が気になるのです。資産寿命を延ばすことに切実なのです。

資産運用、2つの盲点

さて、私が、生涯にわたる「お金との向き合い方」に対する適切な理解を深めるべく、調査・啓蒙のために「フィデリティ退職・投資教育研究所」の活動を始めて、12年目を迎えました。

この間、一貫して大規模なアンケート調査を柱に、消費者の退職準備状況を分析し、米国や英国の状況との比較、資産運用・投資教育に関する海外の知見を取り込む活動を続けてきました。これまでに18件のアンケート調査を行い、延べ16万5288人の生の声を集め、44本の調査レポートを書いてきました。

その中で感じたのは、日本における「お金との向き合い方」で2つの大きな点が欠けている、ということです。

まず、投資未経験者の大多数の人に目を向けずにきてしまいました。

これまで、多くの金融機関が顧客情報を求めてきました。しかし、フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査は、顧客情報を得るための調査ではありません。「投資家の情報」や「顧客の情報」ではなく、「消費者の情報」を集めることを主眼に置いたものでした。

言い換えると、「顧客でない人の情報」や「投資をしていない人」の情報が重要だということです。その背景や声を集めない限り、投資教育の成果は望めません。

誤解を覚悟で言えば、従来の顧客情報を得る活動は、既存の顧客の投資額を増やすためのもの、「1」を「2」に引き上げるためのものでした。しかし、投資教育は本来、消費者の情報を集め、投資をしていない人をいかに投資できるようにするか、すなわち「0」を「1」にするための活動なのです。

すでに投資を行っている3割の方だけでなく、投資未経験の残り7割の声を聴いて、超高齢社会となった日本での資産形成・活用が必要であることを伝えていく必要があります。