脱税は許さない(photo by iStock)

大阪のタコ焼き屋の摘発に、マルサの苦悩が見え隠れする理由

『ニュース女子』で語れなかった秘話
8月20日に放映された『ニュース女子』では、元国税局査察官で『国税局査察部24時』著者の上田二郎氏が、マルサのウラ話を披露して話題を呼んだ。だが、収録で語った話は氷山の一角にすぎない。あのタコ焼き屋摘発の真実、税務署の墜落、ペットボトルに放尿……思う存分、披露してもらおう。

『ニュース女子』に出演してみて

8月20日22:00から「DHCテレビ」公式YouTubeなどで放送された『ニュース女子』(全国地方局でも順次放送)。私は「公務員にズームイン!第二弾~国税庁~『マルサ』の実態を教えてください!」という企画に、ゲストで呼ばれた。

経済評論家の上念司さんと医師でタレントの西川史子さんが司会を務め、藤井厳喜さん、須田慎一郎さん、岸博幸さん、吉木りささんらが並ぶ。

テレビでよく見る著名人ばかりでトークが上手な方々に対し、こちらは人前で話すことを禁じられ、社会の裏側を這い廻ってきたマルサの人間だ。果たして、アドリブについていけるだろうかと、いささか気が引ける思いで、緊張しながら席へ向かった。

席に着く私を見た西川さんが、「またすごい恰好……」と微笑みながらつぶやく。「花粉症か何かかと思った!」「キャラづくり?」などと、出演者から声がかかる。

出演前の上田二郎氏

自己紹介もそこそこに、マルサと税務調査の違いが大画面に映し出された。しかし、出演者の中でマルサを正しく理解している人は何人いたのだろうか? 実際、強制調査と税務調査(任意調査)の違いをよくわかっていないような質問が飛び交う。

「箸やおしぼりの数で売り上げを推定すると聞いたことがあるが、本当か?」「一番面白かった脱税スキームは?」と同時多発的に質問されるが、どこを向いて、誰に答えて良いのか分からない。

上念さんが「質問はひとつずつにしましょう!」と制してくれたが収まらず、「せっかく台本に書かれた質問に準備をしてきたのに、アドリブが多すぎる……」と苦しみながら、ゲリラ豪雨的な質問に答えていくのがやっとだった。

箸やおしぼりからの推計は、帳簿をつけていなかった時代に居酒屋やラーメン屋を調査する手法で、マルサのターゲットからは程遠い。「一番面白かった脱税はどんな手口?」の質問には、複雑かつ巧妙な脱税スキームを話しても、おそらく理解しがたいだろうと思われ、番組を編集するのも大変なんだなぁと思ったりもした。

私のような素人がテレビ出演するのには大きな覚悟がいる。それでも勇気を出して出演するのは、マルサという特殊部隊の存在に、もう少し光が当たっても良いと思うからだ。「租税の公平」のために、不当に税金を逃れている者に目を光らせ、安月給でも歯を食いしばって頑張っている国税査察官にエールを送ってほしいのだ。

この番組だけでは私のそんな思いが伝わらないと感じ、拙著『国税局査察部24時』(講談社現代新書)の担当編集者に依頼して、視聴者に正しい情報をお伝えしたいと、このたび筆を執った――。

 

マルサの強制調査にハズレはあるの?

手の込んだ脱税に切り込み、強制調査によって真実を暴いて告発するのが、「国税最後の砦」と呼ばれるマルサだ。

マルサには内偵調査を専門にする内偵班(通称、ナサケ)と内偵調査の結果を受けて強制調査に入る実施班(通称、)が存在する。ナサケは情報の「情」、ミは実施の「実」から来る隠語で、その業務は完全分業制だ。『ニュース女子』では、ここをもっと深く解説できればよかったと悔やまれる。

なぜ分業制になっているのか?

一つ目の理由は、スペシャリストを養成する必要があるからだ。内偵班は銀行調査や張り込み、尾行、潜入調査を担当しているが、内偵技法は一朝一夕には身につかない。一方、実施班には強制調査の際に重要物証を探し出す技術や、裁判のための供述調書を作成する技術が求められる。