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子供に必ず一度は「セミが羽化する瞬間」を見せたほうがいい理由

生命の強さがよくわかる

夏本番、セミたちも今が盛りと鳴いています。

日本本土の夏のセミは、6月末から鳴きだすニイニイゼミやヒグラシに始まり、9月いっぱいまで鳴き続けるツクツクボウシまで多種多様。真夏の主役は、どちらかと言えば小型で鳴き声も優雅な上記3種とは違って、大型で、けたたましく暑苦しい鳴き声の、ミンミンゼミ、アブラゼミ、クマゼミの3種でしょう(東日本がミンミンゼミ、西日本がクマゼミ主体であることは「自由研究にもってこい!大人も知らない謎だらけ『セミの真実』」を参照)。

セミの寿命は短いと言われています。親(成虫)を基準に考えれば確かにその通りで、1か月も生きられません。それどころか、実際には1か月ほどの成虫寿命を全うすることすら稀で、大半の個体は鳥などに食べられてしまいます。

筆者は仕事柄、セミの鳴き声を録音しながら撮影することがありますが、その最中にやってきたトカゲや鳥に食べられてしまった、という場面に一度ならず遭遇しています。それらの例から考えると(きちんと調べたわけではないので、推測ですが)、成虫寿命はせいぜい1週間ほどというところでしょう。

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ただし、幼生期を含めた「一生」をトータルで計算すれば、セミは昆虫としては非常に長生きの部類に入ります。卵から成虫まで、2年から10数年。種によっておよその年数は決まっていますが、幼虫の棲む環境や機構の条件次第で、同じ種でも多少の差が生じます。

セミの成虫は、樹木との結びつきが深い「地上空間」の生物です。長く鋭い口吻を木の幹に差し込んで汁を吸い、樹皮に卵を産み付けます。

しかし、その卵から孵化した幼虫は、すぐに地上に落下し、その後の一生の大多数を地中で過ごします。生活様式で分類すると、セミの幼虫は「土壌動物」の一員ということになります。

 

貴重な「知的財産」になる

セミの羽化は、できれば子供のうちに一度は見てもらいたいと思っています。その印象は強烈で、生命の不思議さ、強さを実感できます。成長し大人になっても、貴重な生きた知的財産となるでしょう。

羽化のピークは7月下旬から8月上旬ですので、(ツクツクボウシなどを除けば)今年の羽化ラッシュはすでにほぼ終息していますが、観察の方法を説明したいと思います。

セミが鳴いている木を見つけたら、その根本の地面をホウキで掃いてみましょう。ポッカリと穴が開くことがあります。輪郭のはっきりした大きな穴はダメ。それは古い穴で、中にセミの幼虫はいないどころか、ムカデやゲジゲジが潜んでいたりします。

羽化を間近に控えた幼虫のすむ穴は、表面にうっすら土が被さっていて最初はわかりづらいのですが、しばらく掃き続けるにしたがって、入り口の周りの土がポロポロと崩れ、徐々に穴が姿を現します。それまでひたすら木の根っこから養分を摂っていた幼虫が、地中深くから土をかき分け、地表近くまでやってきているのです。

そこに、そっと細い木の枝や松葉を差し込んでみましょう。噛みついた気配が伝わったら、そっと引き上げます。すると、幼虫がぶら下がって出てきます。

こうなると、すでに自力で脱出を予定している(たまに穴から出て地上を這っている幼虫に遭遇することもあります)状態ですから、羽化は大抵、その日の夜半から翌日の早朝にかけて行われます。

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安全な場所に持ち帰ったら、前足をどこかに引っかけてあげます。一番いいのは蚊帳の内側。理由の一つは、居ながらにして夜通しチェックできることです。

カーテンや、鉢植えの植物の葉っぱでも良いのですが、注意が必要なのは、幼虫は最初のうちやたらとせわしく歩き回ること。カーテンの場合、行ったり来たりしたあげく、部屋の隅っこなどの見えない部分に潜り込んでしまう恐れがあります。その点、蚊帳の内側だと、いくら歩き回っても見えないところや遠くに行くことはありません。

幼虫は、しばし歩き回ったのち、深夜になると動きをピタリと止めます。よくみると、だんだんと色が紫っぽく変わりはじめています。

やがて背中に、ピシッと割れ目ができます。見る見るうちにその割れ目は広がり、中から、むっくりと「中身」が盛り上がってきます。それまでの褐色の姿とは似ても似つかぬ、幽玄な、青白い柔らかな塊のようです。

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全身を立ち上げるように露出させたのち、一気に、腹部の先端だけを殻の内側にくっつけて、のけ反るようにぶら下がります。落っこちるんじゃないか、と思うかもしれませんが、心配も手助けも無用です。