「踊る阿呆」が市長に勝った…阿波おどり「圧倒の現場レポート」

止めにきた徳島市幹部も、音を上げた
小川 匡則 プロフィール

「総おどり」を止めにきた徳島市幹部

8月上旬に総おどりの実施が噂されると、遠藤市長は8月10日、実行委員長として振興協会に対し、中止を要請する文書を速達で郵送した。それにとどまらず、「13日に決行する」との噂が流れると、再度FAXで中止を強く求めていた。

そして当日には、前述の通り市長自ら緊急会見を行ったほか、市の幹部職員が両国橋商店街に姿を現した。土壇場で、総おどりをなんとか中止させるために駆けつけた、副市長をはじめとする職員たちだ。

前出の山田氏はこう証言する。

「現場の市職員は市長に指示されて来ているだけで、みんな協力してくれた。しかし、準備ができて、お客さんも集まり、『さあ、これから始まる』という時に、市の部長クラスの職員2人が執拗に止めにきました。

幸い、観客の皆さんがこちらを強く支持してくれたおかげで、彼らも『中止に追い込むのは無理だ』と判断して、どいてくれました。それにしても、あれだけ盛り上がっているところで水を差すなんて…本当にがっかりしました」

メディアの取材に応じる山田氏。黄色いTシャツは徳島市職員(筆者撮影)

そして、「今年の総おどりはこの一度きり。来年はできれば(総おどりが例年行われる)南内町でやりたい。いろんなやり方をみんなで知恵を出して考えて、このお祭りを盛り上げていければ」と前を向いた。

 

こんなに客が少ないなんて

その南内町では例年であれば、総おどりのおかげでチケットは完売していた。ところが、今年は初日から空席が目立ち、ざっと見ても3割程度は空いていた。筆者が確認したところ、人気のあるS席やA席であっても、当日券が残っていた。

昨年まで、徳島市観光協会の事務局長として運営の舵取りをしていた花野賀胤氏は「南内町でこんなに客の入りが悪いなんて考えられない」と呟く。また前出の山田氏も「こんなに観客の少ない南内町は久しぶりで、総おどりを始める前に戻ったようだった」と嘆いた。

空席の目立つ南内町の会場(筆者撮影)

かつて、南内町でも第2部は観客の入りが悪かった。それを改善しようと、振興協会を挙げて取り組み、完成させたのが総おどりだったのだ。

そもそも遠藤市長は、総おどり中止の理由を「南内町以外の演舞場のチケット売上を増やすため」と述べていた。しかし実際には、ドル箱だった南内町の売上をも大きく減らす結果となったわけで、その責任が問われる。

加えて、遠藤市長が今年から新しく始めた「フィナーレ」では「4つの有名連が立て続けに踊り込む」という触れ込みだったが、フタをあけてみると「1つの連が出口まで到達してから次の連が踊り始める」という構成のため、空白の時間ができてしまい、間延び感が強かった。

総おどりが開催されるはずだった南内町では、出口付近に特別席が用意されている。

「総おどりの圧巻の踊りを写真に収めたいという要望に応えて作った特別席で、南内町だけに作った席です。チケットは5000円ですが、今年もすぐに完売しました。しかし総おどりが中止になってしまったので、皆さんがっかりしていることでしょう」(花野氏)

花野氏の指摘通り、この特別席からも、おどりの終了を待たずに席を立つ客が少なくなかった。