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「人工知能に奪われる仕事リスト」のなかに、医療職が入らないワケ

未来の医療を想像しながら考察する

近未来の診察風景

3日前から咳が止まらないので、病院に行った。いつも通り問診ブースに入り、バイタルセンサーチェアに座る。モニターに映るロボット医師と会話し、問診を受ける。どんな症状か、いつからか、質問に答えていく。

バイタルセンサーチェアは、体温、血圧、脈拍、血液の状態などを同時に測定している。昔は、血液内の白血球数や血糖値などを測定するために、針を刺して血を抜いていたらしいが……今はそんなことは必要ない。

肺の病気が疑われるため、レントゲン室に行くよう指示された。検査技師ロボットの指示に従い、胸部をスキャンする。ここまでの経過時間は10分足らず。

胸部レントゲンは瞬時に分析センターに送信され、AI(人工知能)が瞬時に画像診断を行う。

 

巨大データベースに蓄積された膨大なレントゲン写真の中からよく似た画像を探し出し、問診回答とバイタルデータも加えて、疑わしき病状を可能性の高い順に列挙してくれる。今は診断精度がかなり上がり、全くの誤診率は0.01%を切っている。

待合室で5分ほど待つと、診察室に呼ばれる。ここで初めて、医師と対面する。医師が検査結果とAIの診断結果を解説してくれる。

「ウィルス性の咳の可能性99.7%、咳喘息の可能性0.1%、肺がんの可能性0.1%、気管支結核の可能性0.05%…。どうやら風邪です。重い病気ではないようですね。咳が長引いて肺炎にならないように薬を処方しましょう。AIの診断ですから、間違いないですよ」

と医師が言った。私が子どもの頃の医師とは大違いで、最近の医師はみな朗らかで饒舌だ。

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電子マネーアプリで支払いができるようになり、会計に並ぶ必要は無くなった。
無人薬局に行くと、処方された薬が出来ている。マイナンバーカードをかざして薬を受け取る。薬のデータはアプリで見られる。親の世代はお薬手帳なんてものを持ち歩いていたそうだ。

昔は病院に行ったら、診察で待たされ、検査で待たされ、会計で待たされ、薬局で待たされ、半日潰れることもあったというが、今は20分ぐらいで全てが終わる。便利な世の中だ。そして、ふと思う。医師って楽な仕事だな。診察も診断も処方もみんな、コンピューターがやってくれているのだから……。

と、これは、近未来の病院での診察風景を、筆者が勝手に想像したものだ。ただ、こういった未来は、おそらくすぐそこまで来ている。AIの医療サービスへの応用は近年著しく進展しており、画像診断などの応用はすでに実用化されている。

さて、今、AIの発展によって「無くなる職業」はどのようなものがあるのか、よく話題になる。多くの仕事がコンピューターによって自動化され、消滅するというのだ。では医者はどうか。

今回は、「医者はAIに取って代わられる職業なのか」というテーマを考察してみたい。