# 働き方

88%の企業が「わが社の働き方改革は失敗」と答える、その根本原因

では、12%は何をしているのか
越川 慎司 プロフィール

成功のカギは「腹落ち感」

では、88%が失敗しているなら、残り12%はどうしているのか。簡潔に言えば、「どうやって働き方改革に成功したのか」。

成功していた企業の大きな特徴は、会社のトップが経営戦略の一環として働き方改革を位置付けていることです。そして、「WHYとHOW」を整理して社員に伝え続けて、「腹落ち感」を醸成していることです。

つまり、なぜ働き方改革を推進するのか、という明確な理由を持っていて、どういう状態が成功であるかが明確に定義され、それを経営陣と社員が納得したうえで共有しているということです。

 

言葉にすると簡単ですが、実は、「WHY」すらはっきりさせていない経営層が大半なのです。「政府が働き方改革をやれというからやる」……案外、その程度の認識だったりします。「うちの会社にはこういう理由があるから、働き方改革を実施しなければダメなんだ」と経営の責任者が理解しているかどうか。これが最も重要なのです。

たとえば、「ここの部署のメンバーは、家で仕事をする日が週に一日あった方が効率が良い。その方が、彼らも働きがいを感じてくれて、彼らがその仕組みを希望している」となれば、「在宅勤務制度」を導入する、というのが真の働き方改革なのです。

夜7時になったらオフィスを消灯するのは、短期的には長時間労働是正の効果はあるかもしれません。しかし、無駄な会議の撲滅など、仕事のやり方を変えないで残業を抑制するだけでは、売上も社員のモチベーションも下がります。

上から「早く帰れ!」というだけではダメなんです。業務効率を上げて早く帰れるようにするにはどうしたら良いか、そしてそれによって浮いた時間をどう活用すべきかを社員自身に考えさせ、一部でもその実現方法を認めてあげれば、「腹落ち感」を持ち、考えて行動するようになります。

働き方改革の成功例として、私がかつて所属した日本マイクロソフトの名前が挙がることが多いのですが、まさに、この「腹落ち感」を持たせて「WHY」を浸透させることを実践していました。そこが成功の鍵だったと言っていいでしょう。

私は2005年に、パソコンを使ったオンライン会議サービスの責任者としてマイクロソフトに入社しました。このサービスを顧客に売るためには、まずは自社で実践してみようと、オンラインセミナーや在宅勤務、場合によってはスタバで働いたっていいじゃないか、とアピールし、そのための仕組みを整えていきました。

2007年以降は、社内での一部の会議も、一堂に集まるのをやめて、オンラインで参加オーケーとなりました。カフェや自宅、あるいは海外からオンラインで参加するメンバーもいて、徐々に浸透していったのですが、マネージャーの一部は反対していました。管理職は部下の肩をたたき「おまえ頑張っているか?」と、鼓舞するのも仕事。みんなが在宅勤務になると、部下と顔を合わせる機会が少なくなる、というのです。

ところがそんなタイミングで起きた大災害が、その認識を変えたのです。東日本大震災です。