つらいときほど、そばにいて支えてくれる人はそう多くはない。だからこそ、あのとき、かけてくれた言葉が忘れられない。各界の一線で活躍する著名人たちが、そんな恩人たちとの思い出を振り返る。
漫画家と役者の出会い
まだ駆け出しの役者だった梅沢富美男氏(67歳)を支えたのは、『仮面ライダー』や『サイボーグ009』で知られる漫画家・石ノ森章太郎氏だった。
「僕が15歳で役者になって10年経つか経たないかの頃、石ノ森先生の奥様のお母様がうちの劇団を好きで見に来てくださっていました。
そのご縁で、石ノ森先生も劇団を見に来てくださるようになり、なぜか僕を気に入って、いろんなところに連れて行ってくれるようになりました。
『いいか富美男、これからの役者はゴルフくらいできないとダメだぞ』
そう言ってゴルフを教えてくれたり、銀座でお酒の飲み方を教えてくれたり。もちろんご自宅にも呼んでくださいました」
バラエティーや情報番組の「ご意見番」として世の出来事を一喝、ドラマや音楽特番にも出演し、今では大御所俳優として知られる梅沢氏だが、若手の頃は苦労も多かったという。
「先生の期待は嬉しかったのですが、いつかは大舞台や映画に出るぞとオーディションに参加しても『目が小さいからいらない』と、いつも落とされていました。
いつまでたっても僕は、100人入れば一杯の小さな芝居小屋の役者。舞台でお客様を楽しませているという自信はありましたが、僕たちの頃は劇団からの給料はほとんどなく、お客様からのご祝儀が収入源。そのご祝儀で自分のかつらも衣装も作らなくてはなりません。
自然と一部のお客様だけに向けて芝居や踊りをしている自分がいて、それが苦しくなっていました」