日本全土に大感染『カメラを止めるな!』爆発的ヒットはこう生まれた

上田慎一郎監督インタビュー
柴 那典 プロフィール

ひたすら面白いものを作る

――むしろ、とにかく映画の始まりから終わりまで、面白さだけで満たすことを考えた。

そうですね。テーマはにじみ出てくるし、自分らしくって考え始めた時点で自分らしさから離れていくから、自分らしく撮ろうとかも考えずに、ひたすら面白いものを作ろうと思いました。

――面白さって、いろんな原理がありますよね。監督の場合はどんな風にそれを考えて形にしていったんでしょうか。

僕が映画の学校などで体系から学んでいないからよかったんだと思います。

つまり、こういう風にしたら面白くなるとか、ここをこうしたら……っていう体系やロジックから入ったんじゃなく、思春期の頃に観た映画の「最高だ!」って思った瞬間の感覚を撮ろうとしていたという。

僕はハンディカムで中学生の頃から友達と映像を撮っていて、「どうやったらあれを撮れるんだろう」って、経験と感覚で作ってきたので。それがよかったのかなと思ってます。

――具体的には、伏線とその回収の見事さを称賛している人が多いと思うんですが、それはどのように設計しているんでしょうか。

伏線と回収って、そんなに難しいことではないんですよ。まずゴールから決めて、そこに辿り着くためにはどんな伏線がどれくらいの塩梅でいくつ必要かを考えて配置するっていう。塩梅を決めるのは難しいかもしれないですけど。

どっちかって言うと、張った伏線の痕跡を消す方が頭を使いますね。これは何かの伏線だろうって観た人に感じとられちゃうんじゃなくて、その時点で楽しめるものとして成立してないといけない。

たとえば、こいつは面倒臭い奴だからこういうことを言うんだろうなって、その時点での面白さとして成立しつつ、後から伏線としても機能するという風にしている。そういう風に伏線の痕跡を消す方が気を遣うというか。

低予算だからこそできること

―ちなみに、この映画は製作費が約300万円ということも喧伝されていますが、これは映画の製作費としては相当安いですよね。

相当安いというか、長編映画としては底辺レベルでしょう(笑)

――ラジオに出演された時も『ハン・ソロ』だったら2秒しか作れないって言ってましたが。

あれは適当に言いましたけど、実際は1秒も撮れないらしいです(笑)

低予算でも、無名の俳優でも、面白いもの、ヒット作はできるじゃないかって言ってる方もいるんですが、逆にこれは低予算で、無名の俳優だからできる映画なんで。

メジャーで、有名なキャストが出てたら成立できない映画だと思うんです。

――低予算でもできる、じゃなくて、低予算だからこそできることがある。

広瀬すずさんや大泉洋さんみたいな有名な俳優が出てたら、誰がどうなるか予測ついちゃうじゃないですか。

まずそもそも、この映画は2ヵ月くらいキャストとスタッフで密に飲み会をしたりコミュニケーションをとれる時間がたっぷりあったんです。

メジャーの映画でそういうことをしたら普通に拘束期間としてお金がドバっとかかってくるし、そもそもスケジュールがとれないと思うんです。

今やってるようなゲリラ舞台挨拶もできないし、SNSで気軽に発信することもできないかもしれない。

だから、インディーズ映画で、低予算で、無名の俳優だからできた映画なんだっていうことは言っておきたいですね。

 

――メディアは「製作費300万円でもこんなにヒットした!」っていうことを売り文句にしがちですけど、本質的には脚本と演出がもたらした映画の面白さが周りの人を巻き込んだことにあると思います。

そうですね。懸念の声をあげる人もいるんですよ。これから低予算で作られる映画が増えて、搾取される人が増えるんじゃないか、と。だから、そこはちゃんと言っておきたいなっていうのはありますね。

「予算かけなくても情熱があればいい映画はできるんだ」というやりがい搾取みたいなことが横行すると困るっていうのは言っておきたい。

――そうですね。予算をかけなくてもいい、ということが本質ではない。

キャストはもちろん、録音マンの方もビラ配りにまわったりしてくれたのは、みんながこの作品を好きになってくれて、宣伝さえも楽しんでくれてたからなんだと思います。

お金がなくても楽しんで出来るように、工夫をしながらやっています。スタッフ・キャスト総勢60人で大喜利のような公開前カウントダウン(https://togetter.com/li/1235589)をしたり。

宣伝も基本はエンターテイメント。予算をかけなくてもできるってそれだけで、本質を捉えずにやっちゃうと大変だと思います。