日本全土に大感染『カメラを止めるな!』爆発的ヒットはこう生まれた

上田慎一郎監督インタビュー
柴 那典 プロフィール

「出すんじゃない、出るんだよ」

――映画を観た方がグッときているポイントはいくつもあると思うんですが、そのうちの一つには映画愛があると思うんです。みんなで力を合わせて一本の映画を作っていくということ自体の情熱が描かれている。

しかも、フィクションとドキュメンタリーが重ね合っているかのような形でそれを感じさせるところがある。おそらく監督にもそういう意図は強くあったと思うんですが。

フィクションとドキュメンタリーっていうのはありましたね。この企画自体、新人の監督と新人の俳優、まだ経験が豊かではない俳優たちと、ほとんどが30代の若いスタッフで作っているものなんですよ。

37分のワンカットなんかがある一本の困難な映画を作るということと、物語上、一本の映像を撮りきるということが、虚実ないまぜになる状態を作れればなっていうのはありましたね。

――実際、ワンカットの撮影が終わった時の達成感には、いろんなレイヤーのものがありますよね。

そうですね。だから、僕自身も映画を観て、これはマジでこけたのか、シナリオ上で「こけた」って書いていたか、わかんないところもある。

この笑顔のカットは、本当に素でほっとして笑っているのか、俺が「笑って」って言ったのか、もう定かではないんです。

そのライブ感みたいなもの、二度と撮れないものはすごくよかったと思っています。

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――映画だけじゃなく、チームで力を合わせて何かを作った経験のある人は間違いなく共感できるところがあると思います。

映像業界のあるあるとかも入ってるから、映画業界やテレビ業界以外の人が観て楽しめるのかな?っていう懸念も言われたりしたし、自分の中で不安もあったんですよ。

でも、フタを開けたら、サラリーマンや主婦、中学生や小学生も楽しんでくれていて。ああ、普遍性があったんだ、よかったなって思ってますね。自分に置き換えられるんだと思います。

 

――これはフタを開けてみないとわからないことでもあった。

やっぱり、コアなことはしないようにと思っていました。開かれている方がいいとは思っていたので。

たとえば、後半で監督が上から「こうしてください」って言われたときに「わっかりました」って言うじゃないですか。「わかりました」じゃなくて「わっかりました」っていう。あの小さい「っ」って、誰しもが言ったことがあると思うんですよ。

たとえば文化祭で一つのものを作ったりした時とか、会社で上司と仕事をしててもそうですし。今回は映像業界の話にしてるだけで、誰でも自分を重ねられる映画になったのがよかったと思っています。

――そういう、チームでモノ作りに向かっていく時の情熱みたいなものをモチーフにしようという思いは、脚本を書いている段階からありました?

映画の教本とかでも「まずメッセージを決めなさい」とか「まずテーマを決めなさい」ってあるんですよ。映画祭に行っても偉い人が「これは一体何を言いたいんだね?」とか言うんです。

僕はそういうの、まぁわかるけどさ、でもほんっとにうるさいなぁとも思っていたんですよ(笑)

――なるほど、そうなんですね。

この前テレビの取材でこの話をしたら「うるせえな」ってところだけ使われたんですけど(笑)

だから補足すると、メッセージやテーマから入った場合、押し付けがましいものになってしまう場合が多いんです。メッセージやテーマのために映画が利用されているっていうことになりかねない。

そうじゃなくて、とにかく面白いものを、ひたすら面白いものを作ろう、と。

テーマやメッセージは自分の中から滲み出てくると思うので。映画の冒頭でも「出すんじゃない、出るんだよ」って言ってますけど、出てくると思っていたので。出てきたものが嘘のないテーマだし。

だからメッセージやテーマが必要ないわけじゃなくて、最初にメッセージやテーマから入ると、それにとらわれちゃうし、メッセージやテーマにゴマをするような感じになっちゃうというか。