〔PHOTO〕三浦咲恵

日本全土に大感染『カメラを止めるな!』爆発的ヒットはこう生まれた

上田慎一郎監督インタビュー

『カメラを止めるな!』が大ヒット中

映画『カメラを止めるな!』が異例のヒットを記録している。

ミニシアター2館で公開がスタートした同作は、連日満員、鑑賞中には笑い声が響き、上映後には拍手喝采が起こるほどの大評判となった。

その話題が口コミで広がり、テレビの情報番組やメディアもそれを後追いで伝え、累計公開館数は全国47都道府県、180館以上(8月14日現在)に拡大。8月11日~12日の興行収入ランキングでは、数々の夏の超大作に並んで第9位にランクインした。

製作費300万円、出演するのは全て無名の俳優というインディーズ映画が巻き起こした日本映画史上に残る快挙の原動力には何があったのか。

SNSでの話題性がヒットの原動力となること自体は珍しくないが、『カメラを止めるな!』が巻き起こしたムーブメントが印象的なのは、“ネタバレ厳禁”な構造を持つこの映画の魅力を、観客が物語の種明かしをせず「とにかく観ろ」と熱烈な口調で周囲に伝えてきたということ。脚本や演出の面白さだけでなく、その根底にある“映画愛”や情熱への共鳴がヒットの起爆剤となった、ということだ。

本作の題材であるゾンビのように観た人が“感染”してしまうこの作品の魅力の根底にあるものとは。一つの“事件”の渦中にいる上田慎一郎監督に話を聞いた。

(取材・文:柴那典/写真:三浦咲恵)

上田慎一郎監督

自信を持って「来て!」って言える作品

――『カメラを止めるな!』は、おそらく日本の映画史に残るだろうヒットとなっています。予想していなかったことが起こっている真っ只中にいらっしゃって、率直な実感は?

正直、実感はまだないです。というのも、今は毎日驚くようなニュースが飛び込んでくるので、驚いているうちに一日が終わってしまう。

今まで僕の人生には無かったこういった取材やテレビの出演も増えてきてアタフタする毎日。喜びをかみしめてる暇も実感する間もなく、嵐の日々を駆け抜けています。

――最初にこの映画が思ったより遠くに届くんじゃないかという直感を得たのはいつ頃でしょうか。

2017年の10月中旬頃に、初めて関係者試写会をやったんです。それまで僕がずっと自宅のパソコンで編集していたので、初めてスタッフとキャストが集まって試写会をしたんですね。

関係者試写会って、普通はそんなに盛り上がることってないんですよ。台本も読んでますし、笑いどころや展開もわかるじゃないですか。それに、キャストもスタッフも見ながら自分のダメ出しをしちゃったりする。

にもかかわらずその時は途中で笑い声がたくさん起きて、最後の拍手も力強かった。しかも、その後の飲み会が四次会まで続いたんです。一次会が終わって、二次会もほぼ全員来て、結局12時間くらいずっと飲み続けていて。

(C)ENBUゼミナール

――まず打ち上げが盛り上がったんですね。

いいライブをした後とか、いい仕事をした後って、なかなか帰りたくないことがあるじゃないですか。そういう感じで、まず、ヒットするかどうかより「俺たちはやったんだ」「いいものを作れたぞ」ってスタッフとキャストの手応えがあったんです。

その時は当然今みたいにヒットする前でもないし、いろんな著名な方にコメントをいただいたり、映画祭でお褒めいただいたりするもっともっと前のことで。

ただ、いい作品になったっていうこととヒットするっていうことはもちろん別なので、そこから半年以上、みんなで草の根的に宣伝活動を続けてきたんですけれど。

 

――出演された俳優さんが毎日のように舞台挨拶に立ったり、ビラを配ったり、宣伝活動もすごく熱がこもってましたよね。

これは映画だけじゃなくてもそうだと思いますけど、やっぱり作り手たち本人が胸を張ってお知らせしたいと思える作品になったことが大事だったなと思いますね。

大人になったら、勧めたくもないのに勧めないといけない状況の時もあるじゃないですか (笑)

でも、この作品は、スタッフとキャストみんなが、自信を持って、胸を張って、お客さんに「来て!」って言えるし、人を呼べるものになったと思うんです。

まだバイトしながら俳優活動をやってるみんなですけど、生活をちょっと圧迫されようが、これは自分の時間を割かないといけないと思ってくれた。

だから、半年間ずっとSNSで告知したり、足を使ってビラを配ったりしてくれた。それをやってくれた奇跡の方が先にあるんです。

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