腎臓再生で「腎不全死ゼロ」社会は来るか‥‥医師の挑戦

全国33万人の人工透析患者に朗報 
週刊現代 プロフィール

子どもたちをまず助ける

だが、施設を1棟建設するだけでも30億~40億円かかるという莫大な資金をどうやって調達するか。それは、医学研究の領域を飛び出し、産業の領域に入っている。研究者としての力量だけでは太刀打ちできない、大きな壁が立ちはだかっていた。

そんな歯痒い状況から脱しつつある。7月末、横尾氏はこう語った。

「実は今、この壁を一挙に、しかも想定外の短期間で乗り越えられそうなところに来ているのです。

日本の大手製薬会社と、我々が腎臓再生プロジェクトのために作った法人との間に共同研究契約の話が進んでいます。先方はすでに、高品質の前駆細胞が作れる施設を持っています。

しかもその施設は国の認可も得ているので、契約がまとまり次第、前駆細胞の作製に取り掛かれる。ブタの飼育施設に関しても、協力してくれる方針となっています」

実現すれば懸念されていた2点ともをクリアできる、まさに〝渡りに船〟だ。

 

「契約が成立すると、臨床試験の申請など、国との折衝も同社のプロフェッショナルに受け持ってもらえます。

ただし日本は、医療分野での許認可の基準が世界一厳しい……。普通なら、患者さんに再生腎臓を届けるまでに10年くらいかかってしまうのです」

そこで横尾氏らのチームは、海外における臨床試験・実用化の道も同時に探っているという。目下、中国、アラブ首長国連邦、インドといった国々の企業が名乗りを上げており、交渉が進んでいる。

「世界には、経済的な理由で透析が受けられず、亡くなっている人が大勢います。透析には高価な機器に加え、キレイな水も大量に必要で、そのためのインフラも整備しなくてはなりません。

再生腎臓なら安価に、貧しい人たちを救う仕組みが作れると思います。海外でも臨床試験を行い、効果と安全性を立証できる症例を多数蓄積できれば、日本での認可も通りやすくなるでしょう」

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「3年以内の実用化を目指す」と横尾氏は力強く言う。

「再生腎臓を早急に届けたいのは、生まれつき腎機能や尿路に異常があるお子さんです。透析が上手くいかないケースもあり、成人まで生きながらえるのも難しい。

そういう子どもたちを助けつつ、徐々に成人に適用を広げ、腎不全死のない世の中を実現させたいと思っています」

「週刊現代」2018年8月18日・25日合併号より