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「命を捨てろ。でも補償はしない」空襲被害者に冷酷すぎる日本政府

戦時中は援護していたのに…

前回記事(「戦争で片足を奪われても『政府の謝罪も補償もナシ』という日本の現実」)では、第二次世界大戦で被害を受けた人々のうち、元軍人だけが優先的に補償を受けている実態を紹介した。

この状態は今後も維持されるべきだろうか。戦中・戦後の国策をたどりながら、「日本政府の責任」を考えてみよう。

一般市民も「命を捨てろ」と命令された

命がけで戦う軍人が優先的に国から補償を受けるのは当然だという意見もある。しかし、敵から直接の攻撃を受けるという点では、空襲下の一般市民も同じである。

それだけではない。一般市民も政府から「命を捨てて御国を守れ」と命じられていた点で軍人と共通する。

1943年8月発行の政府広報誌「写真週報」には、「私達は『御国を守る戦士』です。命を投げ出して持場を守ります」という「防空必勝の誓」が掲げられている。

左のページには、鉄カブトをかぶった防空用服装が図示され、「われわれは一億一丸となって、あくまで御国を守り抜く責任があり、またその責任を果たす決意に燃えている」と書き添えている。

これは単なるキャッチフレーズではなく、法律上の義務である。当時の「防空法」は都市からの退去を禁止し、空襲時の消火活動を義務付けていた。「逃げるな、火を消せ」という防空義務である。違反者は懲役刑・罰金刑に処せられる。

 

下の新聞の見出しに注目してほしい。

消火せず逃げる者は「不埒者」。防火を怠った逃避者は「処分」する。初期防火に「隙はなかったか」と戒めて、「いち早く待避から戦闘へ移行せよ」と命じている。(左から読売報知1945年4月16日付、同4月28日付、同2月27日付)

戦争末期に、こうした記事が市民に恐怖と重圧を与えた。右端の記事は、消火活動を「戦闘」と表現し、爆弾が落ちたら直ちに防空壕から飛び出して消火せよと呼びかけている。

軍人は戦闘訓練を重ねており武器を携行している。ところが一般市民は丸腰のまま、非力な「バケツリレー」や「火叩き」で猛火に立ち向かうしかない。極めて危険である。