ファイナンシャルプランナーとして活動を始めて15年、これまで3000件以上のお金の相談を受けてきました。
資産運用や保険の見直し、住宅購入、教育費や老後資金づくりなど、相談内容は人によって違いますが、どんな相談でも必ずお聞きするのが、生活費の金額です。
ご相談にお答えするには必要な数字なのですが、これ、意外と答えられない人が多いのです。
洋服や靴のサイズを答えられない人はいないと思うのですが、自分の生活のサイズを聞かれて即答できる人は少ないのではないでしょうか?
保険で準備すべき保障額や、いくらの住宅なら買ってもよいかを判断するのに、生活費の金額は欠かせません。転職先を検討するにしても、出産を機に働き方を変えるにしても、自分が普段どおり暮らすにはいくら必要かがわからなければ、新しい仕事を決めにくいはず。
なによりお金を貯めようにも、収支が把握できていないようでは、計画を立てようがありません。
お金のご相談の中でも特に関心の高い、「老後資金のためにいくら貯めたらよいか」を決めるにも、生活費は重要なキーになってきます。
2年前に今の会社でご相談を受けるようになってから、シニアの方の相談に乗ることも多くなりました。一般に、老後に必要なお金は3000万円と言われていますが、日々の相談の中で、老後資金に関してはつくづく一般論は当てにならないと感じています。
老後の生活と言っても特別なものではなく、今までの生活の延長上にあるに過ぎません。その人にとっては長年過ごしてきた生活スタイルですから、年金生活に入ったからといっても、大きくは変えようがないというのが自然でしょう。
退職したからといって、いきなり一般的な生活に合わせようとしてもそうはいかないのです。
実際、退職プランのご相談に来られたあるご夫婦の老後の生活費と貯蓄残高の推移をシミュレーションしてみたら、老後資金として6000万円あったにもかかわらず、みるみるうちに貯蓄がなくなってしまい、ご夫婦で顔を見合わせて黙り込んでしまったことがありました。
反対に生活費が少なめなのが功を奏して、年金生活に入っても毎月貯蓄ができるといううらやましい人もいるもので、そういう人は退職後も貯蓄額が増えていくわけです。