私は、お金の専門家ではないし、家づくりのお金については、住宅ローンだけで何冊も本が出ているくらい複雑です。ですので、ここでは建築家としての経験からアドバイスできる、お金まわりの話をしていきたいと思います。
打ち合わせの最初の時期に、「銀行にはまずは相談だけでも行ってくださいね。資金については、なるべく早めに動いてください」とお話ししています。
ほとんどの人がローンを組んで家を建てます。資金調達がうまくいかなければ、当然計画もがらりと変わってしまいます。
以前、こんなことがありました。その建て主さんとは3ヵ月ほどずっと打ち合わせをしてきて、基本設計も終了。実施設計に入る段階になって、予定の金額が用意できないことがわかって、結局家づくりは中止になってしまいました。非常に切ない話ですが、夢があっても、お金を貸してもらえなければ家は建ちません。
注文住宅は、よく資金繰りが面倒だといわれます。
建売住宅の場合、土地と建物を一括して購入するため、必要な資金を住宅ローンでまとめて借りることができます。一方、注文住宅の場合は、土地と建物で住宅ローンの融資が下りる時期が異なります。
土地は売買契約が成立して決済がおこなわれるとき、建物は引き渡し時です。つまり、完成してからでないと建物の融資は受けられないのです。
しかし、建物が完成するまでには時間がかかります。そのため、設計料や工事費は分割して支払う決まりになっています。よって建物のローンが下りる前に、ある程度のまとまった資金が必要になります。
だからこそ、いつ、どのくらい資金が必要になるかを見極めて、つなぎ融資をしてくれる金融機関に相談に行くなど、早めにローンの準備をしておくことが大切だと思います。
専門家ぶってこんなアドバイスをしていますが、かくいう私も、自分が家を建てるときにとても苦い経験をしました。
革職人の双子の兄と二世帯住宅を建てようと計画して、図面もある程度できたころ、銀行に相談に行きました。親の代から付き合っている地元の銀行だし大丈夫だろう……なんて甘く考えていたら、しばらく連絡がありません。電話してみると、
「丹羽さんに貸せるお金は70万円くらいです」
はっきり言われてしまい、絶句……。家づくりが一度遠のいてしまいました。
結局は、住宅部分は自己資金、事務所部分は事業用ローンとして融資を受けましたが、ローン申請のやりとりで2年ほど家づくりが遅れてしまったのです。