給料が安い、ボーナスが減った、老後が不安……お金の不安はつきないもの。しかし、『人生を黒字にするお金の哲学』の著者で、公認会計士の林總氏は、「収入の多い少ないは重要ではない」と断言する。そんな林氏が勧めるのが、まず「将来の支出」をはっきりさせること。そして「いくら貯めるか」をはっきりさせることだ。「生涯収支」をプラスにするこのノウハウについて、くわしく聞いた。
「いくら貯めるか」をはっきりさせる
私たちは、いったいいくらお金を貯めればいいのでしょうか。
それを考える前に、「貯蓄」とはいったい何かを、改めて考えてみましょう。

貯蓄というのは、将来の支出です。
たとえば住宅ローンの頭金、子どもの教育費、老後の生活資金、いざというときの予備費など、将来必要になるであろうお金をプールしておくこと。
それが貯蓄です。
目標もなくお金を貯めることは、貯蓄の本来の意味からはずれています。
お金はたくさんあれば安心かもしれませんが、そのために人生の大半が爪に火を灯すような生活になるのでは、意味がありません。天国にお金を持っていくことはできませんから、やみくもに貯める必要はないのです。
少しの余裕をもって、人生を歩んでいけるだけのお金があれば十分です。
ですから、必要な貯蓄額は人によって違います。
1000万円で十分足りるという人もいれば、5000万円必要だという人もいるでしょう。1000万円で足りる人は、5000万円貯める必要はないのです。また、500万円は10年後に必要になり、もう500万円は20年後に必要になるといった、使うタイミングの違いもあります。
いくら貯めるべきかは、将来の支出を知ることでおのずとわかるというわけです。同時にいま、いくら使えるかもわかります。
お金を使うことは、怖いことでも、悪いことでもありません。
考えないで使うから、不安が残ったままなのです。