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キリンレモンが「声優・水瀬いのりをCM起用」で再ヒットした必然

BiSHも、フレデリックも…絶妙起用
砂川 洋介

ファンが盛り上げてくれた

BiSH に続く第2弾はロックバンドの「フレデリック」、そして第3弾に声優の「水瀬いのり」が起用されている。

フレデリックは4人組のロックバンド

いずれのアーティストもおじさんの筆者は知らなかったが、まさにブレイク前夜で、若者を中心にコアなファンを獲得しているアーティストである。そして、このコアなファンがいるということが、広告戦略の成功の秘訣につながっている面も大きい。

なにしろコアなファンというのは、アーティストへそそぐ熱量が半端ではない。「アーティストと一緒に階段をあがりたい」とか「オレたちがメジャーへ押し上げる」という使命感が、アーティストが出演するCMの商品に対してまで波及する。CMの成功がアーティストの知名度を押し上げ、次のステップへと導いていく。ファンの情熱はツイッターなどSNSで拡散され、ネット上で全面展開されていく。

 

実際、「BiSH」→「フレデリック」→「水瀬いのり」と、順に6月まで次々に『キリンレモン♪』のミュージックビデオを公開してくと、ツイッターでの反応は右肩上がりに増えていった。普通、マス・マーケティングでは発売時にコンテンツを投下すれば、その時は一気に沸騰するが、徐々に鎮静化するのが一般的 。それが今回、キリンレモンは新しいコンテンツを次々に投下することで、話題が継続して、むしろどんどん盛り上がっていった。

結果、プロジェクトが始まった3月~6月までにツイート数は約32万件に達し、全体のムービーの再生回数は5000万回再生を記録したのである。

「特に SNSで盛り上がったのは、5月に公開した水瀬さんの歌うアニソン調の『キリンレモン♪』のMVの再生が250万回、そのアニメ版が270万回再生を記録したときでした。それに、水瀬いのりさんのファンの方がキリンレモンを箱買いして、水瀬さんのライブ会場で配ってくださることがあったと聞いたときはすごく嬉しかったです。ファンの方がキリンレモンを拡散してくれた側面が大きく、非常に感謝しています」

『いのりん』の愛称で呼ばれる水瀬いのり

CMと音楽の新しいコラボレーション

まさにファントライブマーケティングの典型のようなかたちだが、さらに圧巻だったのは7月31日の地上波ゴールデンタイムで、水瀬いのりのアニメバージョンCMを90秒だけ流したときのこと。このCM放送はツイッターで事前に告知され、CMが放送される前日にニコニコ生放送で、水瀬いのり出演のもと「TV-CM放送決定!記念トークライブ」が放送されていた。

この放送の視聴回数はなんと310万回を超える 。各視聴者がツイッターでつぶやくことで、さらに何倍も拡散されたのは言うまでもない。

「今回の一連のアーティスト企画では、ファンの方々はもちろん、アーティストの方々からも喜んでもらえたのが嬉しいことでした。ほかのアーティストの方からも、『あのMVは良かった』と言ってもらえていると聞き、ひとつのCMと音楽のコラボレーションのかたちを生み出せたのではないかと思ってはいます。それに、新進気鋭のアーティストさんを起用することに賛成してくれた上司にも感謝しています」

ちなみに、キリンレモンの広告予算はテレビが2割ほどで、8割はデジタル。もともと多額の広告予算があったわけではないところに、アイデアと工夫で新しいかたちの広告戦略が生み出されたという側面もある。

ちなみに、すっかりハマってしまったおじさんの筆者は、次のアーティストCMが気になって仕方がないのだが、それについては「いまのところ予定はありません」とはぐらかされてしまった。時流を見抜いたマーケティング戦略で再ヒットしたキリンレモン。しばらく目が離せない。