日本人は本当に「ウォーギルトプログラム」でGHQに洗脳されたのか

「戦争の有罪性」がもつ真の意味
賀茂 道子 プロフィール

占領軍の考える「無条件降伏」は、「一切交渉を行わない、軍事的な完全敗北」を指していた。だが、当時の日本政府は、「軍の無条件降伏であり国の無条件降伏ではないのだから、占領体制に関して条件交渉が可能」と考えていた。そのため、マッカーサーを東京に進駐させずに横浜に留めようとするなど、占領軍に様々な要望を出していた。

なかでも占領軍を呆れさせたのは、原爆投下批判の国際世論を形成するために、在外公館を通じてプロパガンダを行おうとしたことであった。米国は日本外務省の暗号を解読していたため、その企ては筒抜けであった。

さらに、それまで連合国内で強い非難をあびていた捕虜虐待やマニラの虐殺といった日本軍による残虐行為が、日本国内で一切報じられておらず、罪の意識がないことにも占領軍は驚いた。

こうした状況に対し、「日本人は、敗けたのに反省していない」と捉えたGHQは、「ウォー・ギルト・プログラム」という形で、「敗戦の真実」と「戦争の有罪性(War Guilt)」を日本国民に認識させるための情報教育政策を開始したのであった。

 

「侵略戦争」糾弾より重視されたこと

では、「ウォー・ギルト・プログラム」では、具体的にどのようなことが行われたのだろうか。

よく知られているものとしては、新聞連載「太平洋戦争史」とラジオ番組「真相はこうだ」がある。「太平洋戦争史」は、GHQ民間情報教育局のブラッドフォード・スミスが執筆した戦争史であり、12月8日から10日間にわたって、全国紙に連載された。それまでの「自存自衛のための戦い」という大東亜戦争観を打ち消す、米国側の主張に立ったこの戦争史は、後に書籍として出版され、一時期、歴史教科書としても使われた。

そして、そのラジオ版が「真相はこうだ」である。この番組も民間情報教育局が制作したもので、米国のラジオ番組の手法を取り入れたドキュメンタリー調の番組構成であった。

両者の目的は、戦争の真実を日本国民に提示することであったが、米国から見た戦争史である以上、戦争を日本の侵略戦争として糾弾しているのは当然である。

しかしながら、この「太平洋戦争史」および「真相はこうだ」で重要視されていたのは、戦争が日本の侵略戦争であったこと以上に、

(1)日本が軍事的に完全敗北をしていること

(2)軍国主義者の言論弾圧が戦争への道筋を開いたこと

(3)日本軍が残虐行為を行ったこと

この3点であった。