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公約の撤回で、韓国・文在寅政権が一気に不安定になっていた

さて、どうやって切り抜けるのか

手詰まり感高まる韓国の文政権

韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が急落している。8月に入り、同氏への支持率は、就任以来最低の58%まで低下した。4月27日に板門店で行われた南北首脳会談後、文大統領の支持率は80%を超えた。しかし、6月に入って以降、支持率は低下基調だ。背景には、最低賃金の引き上げに関する公約の撤回や、側近の不正疑惑などがある。

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文氏は、朴前政権下での政財界スキャンダルへの民衆の不満を掬い取って大統領に当選した。同氏の政策に関して、経済の原理を無視して政治主導で最低賃金の引き上げを目指すなど、かなり無理があると指摘する経済の専門家は多い。政権発足から1年3ヶ月、大衆に迎合して政権を運営してきた文大統領の限界が明らかになりつつある。

 

行き詰る文大統領の経済政策

韓国の朴前政権は、財閥系の大企業を優遇し、大企業の成長を支えることで韓国経済の成長を支えることを重視した。しかし、政財界を巻き込むスキャンダル発覚によって、企業寄りの政策は韓国の有権者の非難の的と化した。昨年の大統領選挙を控える中、文氏は民衆の不満取り込みを重視し、朴前政権の政策と対照的な内容を公約に掲げ、大統領に当選した。

文政権の経済政策の目玉が、最低賃金の引き上げだ。2020年に最低賃金を1万ウォン(約1000円)に引き上げることを文氏は公約に掲げた。2018年、韓国政府は企業に16%の賃上げを求めた。経済成長率をはるかに上回る賃金の増加は、企業経営を圧迫する。そのため、中小企業を中心に賃上げ凍結の要請が増えたことは当然だ。

それでも文政権は、所得の増加を重視した。2019年の最低賃金は前年比11%増の8350ウォン(830円程度)と決められた。公約実現には更に17%程度の賃上げが必要だ。この状況に企業経営者などの反発が高まった。一方、労働組合などは、いち早い最低賃金引き上げを求め、文政権の取り組みが不十分であると批判した。

この状況の中で、文大統領はようやく現実的な発想に立ち返ったといえる。文政権は、賃金引き上げが雇用環境の悪化につながっていることなどを憂慮し、政治圧力による所得再分配の強化から、企業重視へと、政策理念を変更した。これは、政策の行き詰まりを文氏自ら認めたことといえる。大衆の不満に迎合するポピュリズム政治を進めてきた文氏にとって、この決定は政権運営の分水嶺となる可能性が高い。