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これだけは知っておきたい「世界経済」の基本的なメカニズム

野口悠紀雄の世界経済入門
野口悠紀雄氏の新著『世界経済入門』(講談社現代新書)では、貿易・為替など基礎的な概念から最近話題の米中貿易摩擦まで、複雑に動く世界経済の仕組みについてポイントを絞って丁寧に解説。社会人にとって必須の教養がコンパクトにまとめられています。刊行に先立ちまして、本書の「はじめに」を公開します。

他国の金融政策に重大な影響を受ける日本経済

日本は外国との間を海で隔てられているので、外国の存在をそれほど強く感じません。 

しかし、日本経済は、さまざまな面で世界経済とつながっています。昔から、貿易を通じて世界経済の変化の影響を受けてきました。いまでは、その影響はもっと強くなっています。 

とりわけ、外国(特にアメリカ)の金融政策によって為替レートが変化すると、日本経済は重大な影響を受けます。ここ数年の日本経済の動向は、ほとんど為替レートだけで決まっていると言うことすらできます。 

このように、日本国内だけを見ていては、日本経済の動きを正しく判断することができません。 

経済分析では、短期的な貿易量の変動や為替レートの変動が注目されますが、なぜそうした変動が起こるかを知るには、世界経済の動向を正しく理解する必要があります。 

また、世界経済の動向に合わせて、企業活動を変えていかなければなりません。たとえば、これまで日本で生産していた製品が海外の安い賃金によってより安く生産されるようになれば、国際市場での競争力が落ちます。そうした場合、生産物を変えるのか、それとも安い労働力を用いるために海外に進出するか、などの対応が必要になります。 

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こうした問題を考える際にとくに重要なのは、中国の重要度が日に日に増大しつつあることです。 

中国の経済発展は極めて急速であるため、われわれはまだその意味と、それがもたらす影響の大きさを、十分に把握し切れていません。中国が工業化した後も、「中国製品は安い粗悪品だ」というイメージに囚われています。 

そうした側面がいまでもあることは否定できません。しかし一方において、中国ではさまざまな新しい経済活動が飛躍的に拡大しています。とくに、ITやフィンテックの分野における中国の発展は著しく、世界の最先端に立ちつつあります。この影響を的確に見極める必要があります。 

1990年代以降の日本の長期的停滞は、中国の工業化に適切に対応できなかったことによる面が大きいのですが、いま中国に生じつつある大きな変化を見逃せば、これからさらに大きな問題に直面することになるでしょう。