放送作家・鈴木おさむが「子供の貧困」漫画の原作に挑んだワケ

「漫画の世界をなんとかしたいんです」

よく言われるんですよ。「漫画原作といっても、どこまでやっているの?」「名前を貸してて、アイデア出してるだけでしょ?」って。

声を大にして言います。この漫画には、100パーセント全力で関わっていて、キャラクターの設定はもちろん、脚本もセリフまで毎回細かく書いて渡しています。あがったネームを見て「漫画だと、こういう見せ方ができるのか」と、驚きと学びの連続の日々です。

<少女漫画雑誌「なかよし」で連載されている『秘密のチャイハロ』。貧しい家庭に育ち、いじめを受けている小学生の少女・愛川愛が、子供専用のハローワーク「チャイハロ」が斡旋する「アブない仕事」に挑戦し、生きるために必要なことを学んでいく成長物語だ。

主人公をいじめる強烈な登場人物、昨今の貧困問題を入れ込んだブラックな設定、そして「子供向け」とは思えない驚きの展開が話題になっている。

この作品の原作を務めるのが、数多くのバラエティ番組を手掛けてきた放送作家・鈴木おさむ氏(漫画・桜倉メグ)。これまで小説の漫画化はあっても、原作は初めて。しかも、「なかよし」は子供向け少女漫画どまんなかの雑誌。異色ともいえる組み合わせだ。なぜ、いまあえて少女漫画原作に挑戦したのか。そして、なぜ子供の貧困をテーマに選んだのだろうか――。>

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漫画の世界にお金と才能を

漫画原作を引き受けた一つの理由は、常に新しいことに挑戦したいと思っているからです。

僕はテレビバラエティの仕事を中心にしながら、映画や舞台、ドラマ、小説なども手掛けてきました。最近では、ユーチューバーの所属する事務所の顧問もやっています。

常に新しいことに挑戦し、その世界で得た知識や経験、ノウハウを活かして、新たに価値あるものを生み出す……それが僕の強みです。だから、漫画原作のお話をいただいたときに、驚くと同時に、また別の世界に挑戦する機会ができた、と嬉しくなりました。

新しいことに挑戦し続けるのは、いわば、僕の生存戦略です。

もうひとつの理由は、漫画の世界に十分なお金と才能が入ってくる流れをつくりたい、と思ったからです。

僕は『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生や、『ちびまる子ちゃん』のさくらももこ先生、『東京タラレバ娘』の東村アキ子先生といった、才能ある漫画家の方々と親しくさせていただいているのですが、みなさんのお話を聞いていると、いま、漫画の世界に流入するお金の量が少しずつ少なくなってきていて、「これでは若い漫画家が育たないんじゃないか」という危惧を抱いているようなんです。

才能のある人が、それに見合ったお金を得られる仕組みがを維持しないと、その文化は衰退してしまいます。漫画は世界に誇る日本の文化ですから、この国の文化の衰退にもつながる大問題です。

先ほども申し上げた通り、僕はエンタメ業界に幅広く携わってきました。一つの作品を軸にしてマルチに展開する方法や、ウェブの世界で流行している収益化の仕組みなども、少しは理解しているつもりです。

おこがましいことは承知で、漫画原作を軸に、これまでの枠にとらわれないような新しいアイデアや展開を生み出していきたい。そして、漫画という文化を、もうひと回り大きなものにするためのお手伝いがしたい……いま、そんな気持ちで漫画原作に向き合っています。