18歳ぼんくら処女、将来の事を1ミリも計画しないまま上京す。

駄青春日記~マヌケな地獄の黙示録〜①
王谷 晶 プロフィール

クラブやオシャレやアートが人生から遠ざかっていく

ある日、昼休みの食堂でいつものように一人で呆然としていると、隅に何かのカタマリがいるのに気づいた。でかい靴、サイズの合っていないジーパンTシャツネルシャツ眼鏡、つまり私と同じような格好をした男子の集団だった。小さく寄り集まり、耳馴染みのある特有の早口で「百式・鬼焼きがさ~」と話していた。私はほとんど無意識にその集団に近づき、「KOF(※)?」と話しかけていた。

こうして初めて学内で知り合いができた。格ゲーオタクA氏とエロゲーオタクB氏とアニメオタクC氏だ。今ならオタサーの姫とか揶揄されるアレかもしれないが、全員同じ格好をして眼鏡を光らせオタトークをしていただけの実に健全な集団だった。

ともあれ東京で初めて友達ができた。そして自分でも気付かないうちに、ものすごいスピードでクラブやオシャレやアートが人生から遠ざかっていったのだった。

photo by iStock

初めてのデッサン授業を受けたり、初歩的なMacの使い方を教わったりと4月は慌ただしく過ぎていった。定期的に実家に電話はしていたが、都度「バイトは見つけた?」と聞かれた。

そう、働かないといけない。

貧乏な家がゲットできる貸付型の奨学金審査には通っていた。奨学金が月10万。寮は朝晩の食費光熱費含め月5万。残りは実家の生活費になっていたので、昼飯代や遊ぶ金と学校の教材代などはバイトしないと手に入らない。

本来ならこの時点で自分の家が進学上京できるような経済状態になかったのを自覚しないといけなかったはずなのだが、家計というものをさっぱり理解していなかったゆえ、私は鼻歌交じりにバイトを探し始めた。

 

バイトは(校則違反だったが)高校の時からやっていたが、裏方仕事ばかりだったのでここはひとつ前から憧れていた「ウエイトレス」をやってみようと試みた。学校近くの町中を歩き回り、オシャレなカフェやレストランに求人の張り紙を見つけては電話をし面接を受ける。

目指していたのは白いシャツに黒のパンツかスカート、腰巻き型のエプロンで働くいわゆるギャルソン風の制服がある店だ。シックでアーバンな、もしくは隠れ家的ヨーロピアンスタイルの店内で同い年くらいの男女がかっこいい制服でスマートに働いているのを店の外から見ていた。私もあれになるのだ。次々と面接を受けた。

※SNK社の格闘ゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ」の略称。