「真実を知りたい…」東京医大不正入試問題、届かない受験生の思い

「受験生はモノじゃない。人間です」
井戸 まさえ プロフィール

真実を知りたい 開示請求への思い

「ともかく、まず、真実を知りたいと思います」

リコさんが求めるのは、入学成績の点数・評価の開示である。

「公平でない試験は、試験と呼べるのでしょうか。司法試験や英検の試験でも、こんなことが起っていたら誰でも怒りますよね。これは大学試験です。

こうした不正があからさまに行なわれていたことに改めて驚きます。医学部の受験料は大抵横並びで6万円。安くはない受験料を払って、公正な審査を受けられないなんて。

自分の試験結果に対する詳細が見たいです。その過程を見れば東京医科大学がどんな意図でどんな操作が行なったのか、行なかったかも含めて見えてくると思うんです。それを知る権利があると思います」

しかし、声をあげることに怖さも感じる。

医学界は狭い。個人が特定されれば、「面倒くさい人物」として就職にも影響があるだろう。それはわかっている。しかし、黙ってはならないとも思う。

リコさんは「東京医大等入試差別問題当事者と支援者の会」の存在を知り、メールを打った(kaese0802@gmail.com)。

〔PHOTO〕iStock

「裏口入学」のジョークが言えるわけ

リコさんに限らず、医学部医学科の学生の間では裏口入学の話は今でもたまに冗談として話される。

「あの人は裏口だよね」などと言うのは、逆に「30年前はあったけど、今はさすがに(裏口入学なんて)ないから」と思っているからこそ、だ。

愛知医科大学等の不正入試事件が問題となったのは1970年代後半。その後も密やかに続いてきたと言われるが、90年代に入るとあからさまな不正入試の話は聞かれなくなる。

学校側もそれが明るみに出れば、不正入試で得るものよりも大きな代償を払わなくてはならない。

 

また、医学部医学科の場合、入学したところで、その後の授業についていくのは簡単ではない。試験の出来が悪いと、進級できない。裏口で入ったら、困るのは本人、そしてその家族だ。医師国家試験は入学の際の不正抑止としても機能しているのだ。

大学側も国家試験の合格率は大学の評判と直結するから、点数が足りていない受験生を入れることは避けなければならない。

多浪は「減点」対象であるとの「都市伝説」過去からずっと言われてきたことだと、50代の女性医師は言う。

医学部医学科の場合2浪は当たり前だが、それ以上多浪したの場合、それまでの反動からか留年危機に陥ることが多いとの印象が持たれているからだろうと言う。

彼女の夫は医学部教授、子ども二人もそれぞれ国立、私立大学の医学部に進学しており最近の事情にも詳しいが、私立大学の場合、入学から卒業、国家試験合格までの全ての成績動向を追跡調査しているという。その厳密さには驚いたという。

女子医大生は真面目で、意外に負けず嫌い。留年危機にあるのはほとんど男性学生だと言う。国家試験という観点から言うと、女子医大生を確保することは大切でもある。

にも関わらず、不正を侵してまで女性の合格者を抑制する理由はどこにあるのだろうか。