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なぜドイツ政府は「送電線会社」の株を10億ユーロで買ったのか

その後どうするつもりかは不明だが…

「50Hertz」の株をめぐって

7月の終わり、ドイツ政府が、中国がドイツで進めている企業買収に「待った」をかけた。

ドイツ政府が阻止したのは、中国の国営コンツェルンSGCC (State Grid Corporation of China)の進出。SGCCが買おうとしていたのは、ドイツの送電線会社50Hertzの株の20%だった。

ドイツの電力市場が自由化されて、今年でちょうど20年。現在、小規模な地域発電を除くと、ドイツ全域の電気は、E.on、 RWE、 Vattenfall、EnBWという4つの電力会社によって供給されている。どの電力会社も、発電、送電を一手に運営していたが、自由化後、EU委員会の強い圧力で、送電部門を分離しなければならなくなった。

そのため、各社の送電部門は売ったり買ったりされ、かつてのVattenfallの送電部門は、「50Hertz」という名で、ベルギーの送電会社EliaとオーストラリアのIFM(Industriy Funds Management)の持ち物となった。株の配分は、60%と40%。

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さて、ときは流れて2017年12月、IFM社が、50Hertzの持ち株の半分を中国のSGCC社に売却するという噂が流れた。SGCC社とは、2016年の米『フォーチュン』誌で、世界で2番目に大きいとされたコンツェルンだ。同社はすでに、ギリシャ、ポルトガル、イタリアの送電線を所有しており、そのほか、オーストラリアやフィリピンにも進出している。

ヨーロッパの中枢であるドイツの送電線も、SGCCの照準に入っていることは間違いなく、4年前から同社はベルリンに研究所を設け、直流電気の送電、ケーブルシステム、蓄電、サイバー物理などの研究にも取り組んでいるという。ゆくゆくは、アジアやアフリカの太陽光電気を世界の隅々に運ぶ巨大システムを構築するつもりらしい。

 

今年2月の初め、早くもIFM社とSGCC社とのあいだで株の売買が内定したというニュースが流れた。これが成立すれば、50Hertz社の株主は、ベルギーのElia(60%)、オーストラリアのIFM(20%)、そして、中国のSGCC(20%)となるはずだった。

ところが3月の終わりに話は一転。筆頭株主であるElia社が、IFMの手放す株を自分で買うと発表。そのあと本当に、4月26日、優先買収権を行使して、IFMの株の半分を買い取った。中国のSGCCは、手ぶらではじき出されたのである。

しかし、そのあとEliaはIFMから買い取った株を、ドイツ国営の金融機関であるKfW(ドイツ復興金融公庫)に譲った。何のことはない、売りに出された50Hertzの株は、ドイツ政府が買ったのである。

この影には、ドイツの経済・エネルギー大臣であるアルトマイヤー氏がいたと言われる。どんな交渉がなされたのかは、わからない。

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