占い師によって相続問題がぐちゃぐちゃになった、ある家族の話

新・争族(あらそうぞく)の現場から②
江幡 吉昭 プロフィール

占い師が不動産経営の役員に…

彼女がなぜ、そうした不安を抱くのか。

実は、父が亡くなった後もしばらくは、長女と母は自宅で同居していたのですが、ある日母が突然失踪してしまったのです。母は着の身着のままで長男夫婦の家に転がりこんだのです。

母としては、長女と折り合いが悪く、同居したくないという単純な気持ちからだったようですが、長女はそうは捉えません。彼女からすれば、長男が母をコントロールするために拉致監禁したに違いない、と勘ぐってしまうわけです。そう思い込んでいる長女は、近所の人たちにも「母は長男に拉致されて軟禁されている」と、触れ回っていたそうです。

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父の遺産相続は相続税の申告期限もあり、結局、当初の予定通り進められることになったものの、それまではなんとか保たれていた家族間のパワーバランスが、残念ながら完全に崩壊したといってもいいでしょう。

しかも、いったん狂いはじめた歯車はなかなか正常な状態に戻らないものなのです。

母が長男と暮らしはじめたことで、大きな自宅で独り暮らしをしていた長女は、数年後に再婚することになりました。相手は15歳年上でバツイチ。ごく普通のサラリーマンで、前妻との間に設けた子供は前妻が育てています。

こうして幸せを取り戻したかに見えた長女でしたが、それは長続きしませんでした。新しい夫のボロがまもなく出はじめたのです。

 

実はこの夫、これまでに何度も転職をしており、生活力がまったくない男でした。結婚時に勤めていた会社も、しばらくしてやめて、無職状態です。今は自宅住まいで家賃もかかりませんし、母から振り込まれる不動産収入の一部でなんとか暮らしていますが、一向に新しい仕事を探す気配もありません。

もともと不動産経営に興味があったらしく、「僕と一緒に、お母さんの持っている不動産経営をやろう」と言い出す始末です。もしこの先、母が亡くなれば、不動産をめぐって兄妹間での争いが勃発することは火を見るよりも明らかでしょう。

不安を感じた長女が私の会社に相談に訪れたのはそんな時でした。

そこで私は、すぐにでも母親に「遺留分に配慮した遺言を書いてもらうこと」と、「不動産経営の法人化を検討するべきだ」ということを提案しました。遺言を作っておけば、遺産の分割割合に関しては100%納得できるかどうかはともかく、それに従うしかないため、不要な争いが避けられます。

また、法人組織にして、建物が法人所有になれば、親の相続財産が減るため、数年経てば、相続税対策にもなる可能性があるからです。さらに法人を2つ作り、1つは長男、1つは長女が株主になって、それぞれの法人が均等に収益不動産の譲渡を受ければ、遺産分割でもめるリスクも大幅に軽減できるというわけです。

そこで長女は、早速母親に相談することにしましたが、一歩遅かったようです。なんと、母が不動産経営をすでに法人化していたのです。しかも、例の占い師が、法人の役員になっているではありませんか。

一般企業においても、経営の助言目的で占い師を役員にする例は珍しくありませんし、その程度なら問題はないでしょう。

しかし、不動産の管理会社に他人が入るのは話が別。役員として報酬を得ているだけならまだいいのですが、うまく丸め込まれて株まで取得してしまう危険性も低くありません。なにせ相手は母親をすでにマインドコントロールしているのです。母を抱き込んで三分の二超の議決権(妻は株の大半)を持った場合、すべては占い師の思い通り。乗っ取られる危険性だってあるのです。

もちろん、これは私の取り越し苦労に終わるかも知れません。しかし占い師に依存する母、生活力のない夫に従う長女等、徐々に台頭してくる他人たちのキャラクターを考えるたびに、田中さんがすべてを失ってしまうのではないか……。そんな不安は募るばかりです。

(江幡氏が講師を務める相続セミナーが99日に開催されます。詳細は以下からご確認ください。http://sokatsu.jp/