占い師によって相続問題がぐちゃぐちゃになった、ある家族の話

新・争族(あらそうぞく)の現場から②
江幡 吉昭 プロフィール

占い師に心酔したきっかけ

そもそもこの占い師との出会いは、父である田中さんがまだ地主業を祖父から継ぐ前にさかのぼります。

田中さんはサラリーマン時代、原因不明の肩の痛みに長い間苦しめられていました。病院に行っても理由がわからず、注射を打っても薬を飲んでも一向に治りません。全国から患者が集まる有名な鍼灸師に診てもらったり、果ては霊媒師にお祓いをしてもらったこともありました。田中さんとしては藁にもすがりたい状況だったのでしょう。

そんな中で出会ったのが、長男の知人という件の占い師でした。東京の都心部の繁華街にある雑居ビルに事務所を構えるその占い師は、全身ピンクのコスチュームに身を包んでいます。基本的には風水を専門とするそうですが、尋ねれば名前の画数や生年月日からタロット占いまで、さまざまな占いの技を駆使するのが特徴です。

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その占い師のアドバイスは「勤務先があっていませんね。転職するべきでしょう」というものでした。ちょうど祖父が亡くなったこともあり、アパート経営を父が引き継ぐ形でサラリーマンをやめ地主業を継ぎました。

するとどうでしょう、何年も苦しんでいた肩の痛みが突然なくなったのです。

喜んだ田中さんはもちろん、母までもがこれを機に占い師に心酔するようになり、何かにつけて、占い師に相談するようになりました。

子供たちからすれば「父の肩痛は、職場のストレスが原因だったのではないか。だから会社を辞めたら治っただけなのでは?」というもので、これについていろいろと言い合っていましたが、両親は既に聞く耳を持ちません。

 

もともと田中さんは当事者意識が低い上に優柔不断な性格だったこともあり、それからというもの、母の相談相手は田中さんではなく占い師に替わっていきます。最近では占い師のところへ毎月一度、定期的に相談に訪れるようになり、アパート経営以外にも「長女は誰と再婚すべきか?」など、あらゆる相談相手として頼ってしまっています。それはすでに「相談」の域を超えて「依存」にまで達していると言っていいでしょう。

そんな最中、田中さんが病気で亡くなったことで、こうしたモヤモヤしたものが一気に表面化してしまいました。今から3年前のことです。

父は遺言をのこしていなかったため、遺産分割では、自宅とアパート経営はすべて母が相続。現預金の多くを長男と長女でざっくり2等分という分割方法が検討されました。

しかし、これに不満なのが長女です。彼女からすれば「自分の方が不動産経営の才能があるのに、なぜ相続できないのか」というわけです。しかも、将来的に母が死亡した時には、長男がアパートを相続するのではないか、という不安も感じていました。