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占い師によって相続問題がぐちゃぐちゃになった、ある家族の話

新・争族(あらそうぞく)の現場から②

最近ではとりたてて大きな資産があるわけではない、ごく普通の家族の間でも争続を巡ってトラブルが増えていることは、よく知られるようになりました。しかし、そうは言っても資産家クラスのトラブルの方がより深刻、かつ複雑なのは間違いありません。なかには一般庶民の家庭では考えられないような登場人物が現れるケースもあります。今回紹介するある土地持ち家族の例は、まさにそんなお話でした。

●登場人物
父79歳 地主                             母82歳 主婦
長男54歳 会社員
長女50歳、バツイチ子なし

経営方針を占い師と相談?

東京の郊外に住む田中さん(仮名)一家は、東京を東西に横断する私鉄沿線の急行が止まる駅周辺に複数の土地を持つ、いわゆる地主です。

家族構成は田中さんと妻、子供は長男、長女で、田中さん夫妻と長女が自宅に同居。長男は結婚して近所に家を買って住んでいます。

保有する土地の多くには、ある大手ハウスメーカーの手による2階建てアパートが建てられています。表向きは農家を名乗っていますが、農業での収入は微々たるもので、ほとんどは不動産の賃料収入という状況です。

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急行が止まる駅といっても、ひと昔前までは、駅の周りは自転車置き場と焼き肉屋のビル、そして飲食店がチラホラある程度でした。しかしここ数年で急速に発展、今では大手の百貨店や駅ビルが完成、駅前ロータリーも複層化されて若いファミリー層がたくさん訪れるとてもにぎわう駅に変貌。それにともない田中さんの資産価値も10億円に上昇、今や立派な富裕層と言ってもいいでしょう。

 

アパート経営は母の仕事ですが、彼女の経営に対する基本的考えは、修繕費などのコストは最低限に抑えて、空き室が出れば賃料を下げることで対応するというもの。まともなメンテナンスをしていないため、多くの住戸の家賃は、新築当時と比べてかなり落ちていましたし、周辺の相場よりも安い住戸も少なくありませんでした。

これに対して疑問を感じていたのが長女です。バツイチで出戻ってくる前はハウスメーカーに長年勤務していた経験もあり、「しっかり修繕をすることで家賃を維持した方がいい」という、母とは真逆の考えだったからです。

とはいえアパート経営の主体は母ですから、長女もあまり強く反論は出来ません。長女もそれは仕方ないと思っていたのですが、彼女にとって気になることがほかにもありました。それは、アパート経営の方針を母親自身ではなく、ある女性占い師と相談して決めていたことです。

これから建てるアパートの方角にはじまり、植木や石の配置などまで、不動産に関するあらゆることを、占い師に相談し、その言葉通りに従っていたのです。