株価最高を記録したマイクロソフトの驚くべき「未来戦略」

なぜこんなに好調なのか
上阪 徹 プロフィール

クローズからオープンへ

マイクロソフトは創業以来、基本的にソフトウェアのライセンスビジネスによって売り上げを立ててきた。1台のパソコンにOSであるWindowsが入り、Officeをはじめとしたアプリケーションが入り、それらはライセンスの形で販売された。

アップデートが行われれば、有償でライセンスが与えられた。アップデートの度に、課金ができるというビジネスモデル。これが巨額の売り上げ、利益を生み出した。

 

その成長がいかに凄まじいものだったか。売上高を比較してみれば、わかる。

1980年 800万ドル
1990年 1億8350万ドル
2000年 230億ドル
2010年 625億ドル

このビジネスモデルを変えていく、と宣言するのである。日本マイクロソフト業務執行役員の岡部一志氏はこう語っていた。

「例えば営業が売り上げを立てるのは、これまで何本のライセンスを販売できるかというものでした。ところがこれが、どのくらいマイクロソフトのクラウドを使ってもらいコンサンプション(消費量)を獲得できるか、に変わったんです。ソフトウェアを購入してもらうのではなく、クラウドサービスをいかに使ってもらえるかということ。こうなると、仕事のスタイルはがらりと変わらざるを得ません」

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1回だけ売り込んで買ってもらえばいい、という商売ではなくなる。信頼関係を築き、さまざまな提案をすることで、長くたくさん使ってもらうという商売をしなければいけなくなる。発想も、カルチャーも、大転換が必要だった。そして、そのためにまたナデラCEOが業界を仰天させる。なんとかつてのライバルと手を組み始めるのである。

ナデラCEOは自らシリコンバレーを訪れ、競合他社はもちろん、オープンソフトウェアの世界のエンジニアたちとも次々に提携を結んでいく。ソフトウェアの世界で圧倒的な力を誇ってきたマイクロソフトは、自社製品ですべてをまかなう道を選んでいた。それだけの強さを持っていたからだ。しかし、オープンでない姿勢は、結果としてマイクロソフトの取り組みを後手後手に回させる。ところが、これが変わるのだ。

象徴的な例は、長年のライバル・アップルと手を組んだこと。iPhoneよりも良いものを、と鎬を削ってきたが、今は違う。iPhoneは、マイクロソフトのアプリやサービスをたくさん使ってくれる素晴らしいデバイスだ、という位置づけなのだ。iPhone向けアプリを作り、iPhoneでもっとマイクロソフト製品を使ってもらおう、という戦略に切り替わった。オラクルも、セールスフォース・ドットコムも、同様。オープンソフトウェアのLinuxまでクラウドビジネスの重要なパートナーになった。

だが競合から見れば、マイクロソフトのソフトウェアを使っているユーザーは世界で十数億人。アップルにしても、魅力は大きい。さらにパソコン用だったWindowsはゲーム機のOSにもなり、IoT機器のOSに。多くが無料の完全なプラットフォームになった。そしてマイクロソフトは、ビジネスパートナーが広がれば広がるほど、クラウドで稼げることになる。この大胆なシフトは、マイクロソフトがクラウド領域で世界で戦える数社の一角を担う存在に転換できたことを意味していた。

何しろ、パソコンのOSで9割以上のシェアを持つ世界最大のソフトウェア会社なのである。他の企業と積極的にコラボレーションを始めたときのインパクトは計り知れない。さらに、マイクロソフトには、先端技術でも大きなポテンシャルを持っていた。