誰も飛べない高さの跳び箱をこれだけきれいに跳べたらそれは誇らしいけれど・・・ Photo by iStock

「天才児を育てる」を名目に掲げる「押しつけ教育」の恐怖

危ない保育所・幼稚園を見極める

今、保育・幼児教育の現場には、子どもの「主体性」という言葉が飛び交っています。子どもたちが自らの考えや気持ちに従って遊びを求めていく「主体性」は、小学校以上の学習で大切とされる「主体的・対話的で深い学び」にもつながっていくものです。

われわれ昭和の時代の子どもたちは、先生に教えられたこと、言われたことを、正確に覚えて再現できる力を育てるための教育を受けてきました。しかし、これから先の子どもたちにとって必要なことは違います。たいていのことは、AIや、その他多くの機械がやってくれるようになるでしょう。

そういう時代に必要な力は、言われたことを正確に再現できる力ではなく、「自分の頭で考え、作り出す能力」です。この10年の携帯やスマホのハード、ソフトの進化を思えば、これからの10年でどこまで進むのか想像もつきません。時代は進んでいます。今の保護者の世代が子どもだったころの常識は通用しなくなっています

しかし、そんな時代とは真逆の「教え込み」を行っている園もあります。「教え込み」の成果は見栄えが良く、親を感動させがちなので、「子どもには教え込みが良い」とだまされてしまうこともあります。親は何を大切にして幼稚園・保育園を選べば良いのか、今回は「教え込み」によって行われる「押しつけ教育」の怖さについて考えます。

 
ジャーナリストの猪熊弘子さんは、長年保育の現場を取材し続けている。保育の現状に大きな危機感を感じ、弁護士の寺町東子さんと共著で『子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』を刊行した。その猪熊さんが保護者が園探しを始める前に、わが子を守るためにぜひ知っておいてほしいことについて、短期集中連載で「危ない保育所・幼稚園」の見分け方をお伝えする。第一回は、命を失いかねない危険な園についての現実を、第二回は「子どもから遊びを奪う保育の恐ろしさ」についてお伝えした。第三回は、洗脳的な教育だと話題になったあの幼稚園から考える「押しつけ教育」の恐ろしさについて。

「思想」を教えこむ園で洗脳?

数年前、大阪の幼稚園関係者から、「とてもひどい保育を行っている幼稚園があって、保護者から相談を受けています」という話を聞いたことがありました。その「幼稚園」こそ、のちに森友学園問題で渦中の人となった籠池夫妻が運営していた、塚本幼稚園でした。

特定の保護者を攻撃し、四六時中電話をかけるなどして追い詰めている、という話しで、中には園を辞め、別の園に逃げてくる親子もいたと聞きました。法人が運営していた別の幼稚園(現在は閉園)でも、近隣の小学生とのトラブルがあったことなども報じられていました(日刊ゲンダイhttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/200801)。法人が運営していた別の保育園の保護者からも、「土曜日には開園してくれない」「2歳児にお昼寝がなく、眠くなった子どもに対して『居眠りをして困ります』と手紙がくる」などの話を聞いていました(現在は閉園)。

園の教育方針も特異でした。戦前の教育を取入れ、軍歌を歌わせたり、合奏をしたり、大日本帝国時代の「教育勅語」を暗唱させたりという教育でした。そういった姿はYoutubeの動画を通して拡がっていましたので、みなさまもご覧になったことと思います。

森友学園問題が発覚したからこそ公になった、塚本幼稚園の「教育」。その幼児たちの姿に安倍昭恵夫人が感動して涙する映像も繰り返し流れた Photo by Getty Images

塚本幼稚園本体は、今では運営は籠池夫妻から娘の町浪園長にバトンタッチされ、生まれ変わろうとしているようです。しかし、かつての塚本幼稚園のような復古的な教育が、今も一部の園では行われています。戦前のように子どもたちを徹底的に訓練し、教え込むことで、どんな人間に育てようというのでしょうか

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