女性の容姿への「残酷な心理実験」の結果が示す社会のひずみ

日本人の脳にせまる⑦
中野 信子 プロフィール

バストに関する実験結果

また、胸の大きさが職能の評価に与える影響は看過できない。女性の胸のサイズと社会的評価についての調査はいくつもあり、ゲゲンが2007年に発表したヒッチハイクの成功率に関する研究がよく知られているだろう。

学生の中から容姿は平均的であり、バストの小さな女性を選んでヒッチハイカー役になってもらい、最初は彼女が普段つけているAカップのブラジャーを着用してヒッチハイクをしてもらう。次に、Bカップ、Cカップと大きさを増していくと成功率はどう変わるか、という実験である。女子学生にはノーメイクで、ジーンズとスニーカー、胸を少し強調したTシャツを身に着けてもらっていた。

すると結果は、およそ700人の男性ドライバーのうち、Aカップのブラを身に着けたときは14.92%が車を止め、Bカップでは17.79%、Cカップでは24.00%と成功率が格段に上がったのだ。ちなみに女性ドライバーでは胸の大きさと成功率には有意な関係はなく、いずれも10%以下の成功率となった。

男性では、胸の大きさが女性に対する親切行動の誘因になっていることがこの実験から示唆されたというわけである。

それでは、胸の大きな女性は男性から助けてもらえるから多くの場面で有利、と言えるのだろうか。

男性から見れば大きな胸は魅力を決定する重要な因子として機能していることは間違いなさそうだが、一方で、胸が大きいほど「頭が悪そうだ」という印象が形成されてしまうこともまた示されている。

 

1980年に発表されたクラインケとスタニスキーによる調査がこの問題に関する初めての報告である。

女性の簡単なプロフィールと写真を被験者に見せ、その印象について答えてもらう。プロフィールはほとんど同じだが、バストサイズに関する記述だけが違う3種類(バストが小さい、中くらい、大きい)の用紙が用意されている。写真でもバストサイズが異なっている。

すると被験者たちの反応として、バストサイズが大きい女性に対してだけ、知的・潜在的能力を低く評価するという現象が見られたのである。つまり、知性・品性・モラルに欠け、教養のない女性だとみなされたということになる。テストをしたわけでも話をしたわけでもなく、たった1枚のプロフィールと写真から、胸の大きさが違うだけでそう判断されたのだ。

同様の実験が2002年にも報告されている。

女性が6分間講演をしているビデオを大学生の被験者に見せる。女性は中肉中背でセーターを着用している。バストサイズだけが異なり、A、B、C、Dカップの4種類の動画が用意されている。バストサイズは特に強調される服装ではなく、言語によって明示的に示されているわけでもない。課題は、この動画を見て、その人物の知的な側面について評価をしてもらうというものである。

女性被験者はそうではなかったが、男性の被験者は、バストサイズによって大きく異なった反応を示した。AからCカップまでは評価が明らかに高くなっていったが、Dカップでは大きくその評価が下がったのである。

それでは、実際のところどうなのか、というと、外見と知能の間にはr=0.126という弱い正の相関が見られるというのが現在の知見である。つまりまったく関係がないとも言いきれないのだ。