北方領土問題も関係なし…日本の対露ビジネス、こんなに拡大していた

まだまだ可能性はある
河東 哲夫 プロフィール

シベリア・極東はカネになるのか?

ロシア人も日本政府も、日本の企業によく「シベリア、極東をやってくれ」と言ってくる。それは本当にカネになるのか? 製造業の場合、カネになるケースは、ほとんどウラル山脈以東のロシア西部に集中しているのだが、シベリア・極東についてもできることはある。

まず資源の開発・輸入は、まだ大いに可能性を持っている。石油・天然ガスだけでなく、資源の宝庫ヤクート共和国には希土類も眠っているだろう。

しかし資源開発で考えるべきは、いずれも開発費用が莫大で、採算が取れないかもしれないということだ。ヤクートの資源を持ち出すためには、労働者を住まわせるための町を築き、維持し、原生林の中、夏には表面が融けて不安定化する永久凍土地に鉄道を敷いてそれを維持していかなければならないからだ。

日本からシベリア・極東にモノを輸出するのはどうか? 極東は人口がわずか600万、シベリア(と言ってもその実体は、魚の骨のように伸びるシベリア鉄道沿線にはりつく10程度の大都市群しかない)は2000万人程度。購買力は限られている。

日本の日本海側諸都市は優れた日本の果実などを極東諸都市に売ろうとしているが、需要は限られ、バイヤーの数も限られている。

しかもどこにモノを送ろうにもシベリア鉄道を初め、ロシアの鉄道運賃は割高で、このために多くのビジネスが成り立たない。シベリアで消費されるモノの多くは欧州部の港から入ってくるし、極東、シベリアで大豆などを栽培して中国の東北地方に輸出しようとしても、この鉄道運賃がネックとなる。

そこを逆手にとって、シベリア鉄道の輸送能力の大強化(今は石炭の輸送に多くを取られている)、鉄道維持費用の大幅削減(レール維持のために沿線に無数の集落が作られているが、その維持費が膨大である。これをドクター・イエロー導入で合理化する等)をプロジェクト化する手もある。

シベリア、極東で何か作れるか? 作れる。ただしものによって。

成功例ではハバロフスクで日本の企業が大規模温室を作って野菜・果物を生産している例がある。しかしこれを移出・輸出しようと思うと、鉄道運賃の問題に突き当たるだろう。

製造業の進出には、多くの問題がある。1つは工場勤務を希望する者が少ない上に、賃金水準が高い。そして現地の市場規模は前述のように非常に小さい。中国の東北部やロシアの西部に輸出、移出しようとしても、鉄道運賃の問題がある。そして、ロシア極東を生産基地にして東アジア諸国や米国に製品を輸出するやり方も成り立ちにくい。労賃が高いからである。

 

環日本海構想、北朝鮮の羅津港の将来性

将来、日本と北朝鮮との関係が正常化されると、ロシア極東をめぐっても新たなビジネス・チャンスが生まれるだろう。

以前から「環日本海構想」というのがあって、最近では下火だが、日本の日本海側諸都市、ロシア極東、北朝鮮、韓国、そして中国の東北地方をまとめた経済圏を想定している。

その核は日本と韓国、中国東北地方の間の取り引きで、ロシア極東と北朝鮮はこれを仲介することで儲けることとなろう。鉄道運賃の問題さえ解決できれば、豊かな黒土を持つアムール地方あたりは中国東北地方の穀倉(大豆、小麦)になることができる。

北朝鮮とロシア極東の境にある羅津港は、もともと戦前の日本が満州の海の出口として作ったものだ。現代の中国は日本海側に出口を持っていない。この羅津港から数十キロ、豆満江をさかのぼるとやっと中国領の琿春が川の対岸に現れるのだ。ここまでは鉄道、トラック、船での往来が可能なのだが、いずれも改修、浚渫をしないと使えない。

他に、ウラジオストック等、ロシア極東の港から直接、中国東北地方に入ることもできる。それは戦前のシベリア鉄道がハルビン経由で一直線にウラジオストックにつながっていたのが、今ではほとんど利用されていないのを改修するのである。