北方領土問題も関係なし…日本の対露ビジネス、こんなに拡大していた

まだまだ可能性はある
河東 哲夫 プロフィール

ロシア人は信用できるのか?

日本人は、「あいつは信用できるのか?」ということばかり気にする。日本でもそうだが、100%信用できる人間はいない。

ロシア人には「俺は白人だ」とばかりお高くとまっている者、東洋人を笑顔でだましてカネを巻き上げることばかり考えている者もいる反面、自分の仕事に誇りを持ち、外国人とも誠意をもって付き合う者、ただの小心者、豪快で気のいい典型的なロシア人と様々いる。

ロシア人とはちょくちょく会って腹を割ったつき合いをし――酒を呑む、呑まないは関係ない――、互いに裏切りにくい関係を作った時、ロシア人ほど義理堅い人間はあまりいない。彼らの間のつき合い方は濃密なのだ。

そして日本の企業と違って、つき合う相手はオープンである。系列外の企業でも、外国人でも、気に入ったとなれば、親しく誠意ある関係を続ける。要は、「一緒に仕事をやろう。一緒にもうけよう」という心がまえで、なおかつ相手が裏切ると損になるような仕組みを契約の中にこしらえておくことだ。

ある日本の企業はロシアでの建設案件を実施した時、合弁への出資を故意に日ロ50:50とし、双方が本気で取り掛からないと動かないようにするとともに、合弁会社の資金は海外におき、ロシアの現地法人には資産を持たせないという用心をしている。

この頃では、日ロ企業の間をとりもつ信頼できるブローカーも増えた。ロシアに特化した弁護士も現れている。そのあたりは以前とは様変わりで、ロシア・東欧貿易会とかJETROに相談すれば、そのあたりの情報は喜んでいろいろ教えてくれる。

但し実際のビジネスはオウン・リスクとなる。ロシアでのビジネスは契約どおりに自動的に進むと思ったら大間違いで、港での荷揚げから始まって通関、貨車の確保、あるいは工場建設予定地での水、電気、ガスの確保など、問題がしょっちゅう起きる。

平社員ではらちが明かず、中小企業の場合、社長が現地に1週間ははりつくこととなる。だから中小企業は、大企業についていくか、有能なロシア・ビジネス経験者を現地にいつも置いておくことが必要になる。

 

北方領土問題はビジネス・リスク?

日本の企業のロシア担当の面々は、北方領土問題に辟易しているようだ。

「ロシアの現地で苦労してプロジェクトを組み上げ、本社にうかがいを立てると却下されることが多い。本社の幹部はロシアのことを知らないし、ネガティブなニュースばかり聞いているので、リスクを避けようとする。その『リスク』の中に北方領土問題が入っているのだ。

日本政府は、今はロシア・ビジネスの旗を振っているが、北方領土問題で再び対立すればビジネスにもまた冷たい態度を取るようになるのだろう。頼むからそういう虫歯のような問題は、もういい加減なところで片づけてくれないか」と言われたこともある。

しかし前述の1970年代のシベリア・極東開発は、ソ連が「北方領土問題など存在しない」という硬い姿勢を取っていた時代に行われたものである。

ビジネスが進展することは、日本との関係を進めることに利益を持つロシア人が増えることを意味する。

ドイツやアメリカなどと比べると、日本はこの点、日本の肩を持ってくれる有力者が少なすぎる。

北方領土問題が解決しないうちはODA的な優遇金利は駄目だが、JBICの通常の金利で輸出信用をつけることはいくらでもできる。日本企業側にも利益になることだったら、日本政府の側から邪魔をすることはないだろう。

ただ、けじめをつけることが重要で、軍用にも使える先端技術の供与、あるいは米国の制裁措置に触れるビジネスは避けねばならない。米国の制裁措置に抵触すると、米国政府から制裁を受けるからだ。

米国政府の言うことを聞かないのは日本企業の権利だが、もし米国市場でビジネスをしていると、「罰金を払わなければ米国でのビジネスを禁止する」という手に出てくるだろう。ひどい場合には米国の銀行との取引を禁じられてドルが使えない、つまり海外貿易ができないようになってしまう。