AI時代には「高学歴・一流企業・正社員」ほど大量失業するワケ

終身雇用は終わる、君は生き残れるか
松崎 隆司 プロフィール

「終身雇用」はまもなく終わる

「日本はよく、終身雇用制だといわれますが、そのような保証を誰ができるでしょうか。逆に言えば、一つの会社に縛られなければならない義務もありません。

私たちの調査では、『ひとつの会社で生涯働きたいか』という質問に、『そんなことはない。いい選択肢があれば移りたい』と3分の2の人が答えている。雇用の流動性がないから一つの会社にいるだけに過ぎないのです。労働を測る物差しが労働時間しかない、組合は全社員一律を要求する、こうしたことが、結果的には多様な働き方をしたいと思っている人にとって足かせになってしまっている。

しかし、働き方を抜本的に変えなければ日本企業は生き残ってはいけないし、従業員も働くことの成果と貢献に向き合い、柔軟に対応をしていかなければ、結局、職を失ってしまうのです」

 

しかも、今後AIやロボット化、IOTなどで、人手不足どころか、人余りになる恐れすら指摘されている。

例えば、米国で誕生したウーバー・テクノロジーズだ。

「車と運転手をセットにしてサービスを提供しているのがタクシー会社ですが、ウーバーは、車もなければ運転手もいません。スマホアプリに登録している運転手と顧客をネット上で結びつけた。顧客はGPS機能を使ったより迅速な配車手続きができ、一方でドライバーは空いた時間を有効に活用することで収入を得ることができる」(岡田氏)

こうしたビジネスが普及すれば、タクシー会社は必要なくなっていく。これは何もタクシー会社、タクシー運転手だけの問題ではない。AIやIoTの普及で、人の仕事の半分近くがなくなるという調査報告もある。

野村総合研究所は、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究で、国内601種類の職業についてAI(人口知能)やロボット等で代替させる確率を試算した。

2015年12月2日に発表したレポートによると、「10年から20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています」という。さらに、このレポートにはAIやロボットで代替可能性が高い100の業種も掲げている。そこには銀行窓口係、保険事務員などの事務員、建設工事作業員、自動車の組立工などの工場労働者、路線バスや電車、タクシーの運転手、スーパーの店員などの職業が記されている。

事実、みずほ銀行は1万9000人、三井住友銀行は4000人、三菱UFJ銀行は9500人の人員や業務量削減を決行することを表明している。このほか富国生命は給付金査定関連部署の34人分の有期契約を終了した社員の仕事(全社員131人のうち3分の1)をAIで代替することに成功した。大手コンビニのローソンは無人レジの開発を進め、スマホで代金を支払うことができる「ローソンスマホペイ」を4月から実証実験を始めている。

このほか自動車業界では、2020年の自動運転の実用化に向けて開発を進めている。野村総研の予測は、現実味を帯びている。

それだけではない。野村総研が、代替可能性が高いとして挙げていなかった弁護士、公認会計士、アナウンサー、小説家など専門的な技能を持つ分野でも、AIがとって代わるといわれているようになってきた。

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「ハーバードのロースクールなどでは弁護士の仕事がAIにとって代わるのではないかといった話が出ていますし、AIが書いた小説が『星新一文学賞』の一次選考を通ったことは大きな話題になりました。日経新聞では、すでにAI記者が決算記事を書いています。アナウンサーについても、すでにAIで人の発音と区別がつかないくらい正確なイントネーションをつけることができるようになっています」(IT業界に詳しい事情通)

では、AIが人の仕事にとって代わる時代は来るのか。

「仕事をさらに細分化したものを私たちはタスク(作業)と呼んでいるのですが、AIやロボット化により、繰り返されるマニュアル作業が代替されていきます。そうしたタスクを減らしていく。

その代わりに、集められた情報の意味合いを考えたり、文脈を作るといった仕事のニーズは高まります。AIやロボット化によって仕事というかたまり自体が大量になくなるということはない、と思います。しかし、人の仕事のやり方は大きく変わる。それに対応できない人が取り残されて行ってしまうのは事実でしょう」(岡田氏)