「超えてはいけない一線」は守る

ドイツやイタリア、そしてオーストリアなど欧州諸国においても極右の台頭が顕著だ。それでも、この「超えてはいけない一線」という公式非公式のコンセンサスは、それぞれの国において「最後の砦」としての役割をかろうじて果たしているように思われる。

この言論における「超えてはいけない一線」は、当然ながら時代とともに変化してきたわけで、いまの欧米の主要国においては、いわゆるLGBTへの非難や差別的言論は、すでに「超えてはいけない一線」になっていると言って差し支えないだろう。また、アジアにおいては、まさしく僕が暮らす台湾においていま、それらが「超えてはいけない一線」になりつつある。

いっぽう、日本においては二階幹事長が「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と杉田氏の意見を問題視しないと断言したくらいである。まだLGBTへの非難や異論は、「超えてはいけない一線」としてのコンセンサスを獲得していないようだ。

暴言に暴言では対立を煽るだけ

7月27日の自民党本部前での抗議活動は、僕自身は台湾にいたので参加できなかったが、参加した友人からの報告や報道で、その規模や様子をある程度知ることができた。抗議活動は、しっかりと主張はしながらも、概ね穏やかに行われたと聞いている。

しかし、報道の写真を見る限りでは、”Fuck you very much”や”Public Enemy”といった、非常に過激な言葉を使ったプラカードや、杉田議員の顔をおどろおどろしくコラージュした画像が掲げられたりもしていたようだ。(ちなみに”Fuck you very much”はLily AllenによるLGBTプロテスタントソングの歌詞から取ったものだとご指摘を受けた。僕もこの歌に込められた思いには賛同するが、抜き出してプラカードにしてしまうと、一般の方に伝えるやり方としては、やはり誤解を招いてしまうと思う)

また、本件とは直接的な関係はないはずの、たとえば「安倍はヤメロ!原発反対!」と言ったようなプラカードも写真のなかに散見された。本来、LGBTの人権は、左右や保革の対立を越えた普遍的なものであるはずなのに、特定の党派性が強調され、対立を煽ってしまうのは、いささか残念に思う。

ネット世論の右傾化が叫ばれて久しい。僕の印象では、いわゆる「ヤフコメ」といわれるYahoo!ニュースのコメント欄においては、LGBT関連の話題に関しては、思いのほか寛容な意見が多く見られてきたように思う。

しかし、今回の抗議活動に関するニュースへのコメントは、「そもそも、こんな人たちに税金使うのって本当に正しいの?」「どうせプロ市民でしょ?」等々、かなり批判的なコメントや、それに対しての「いいね!」が多く寄せられていた。

僕が知る限りでは、抗議活動に参加した大多数のひとは、節度ある行動に徹していたはずだ。しかし、報道においては、どうしても過激な側面がクローズアップされてしまう。そして、そうした報道を通じて、「LGBTっていうのはややこしいひとたちだな」という誤解が生まれてゆく。