# 日本経済

デフレ大国ニッポンで「インフレに苦しむ老人」という残酷な現実

知られざる「物価格差」の正体
白波瀬 康雄 プロフィール

物価上昇で消費を削らざるを得ない老人たち

このように高齢者がIT化への対応が遅れていることは、現代において物価格差を生む大きな要因として見逃せなくなってきている。

 

たとえば、年齢階級別にネットショッピング利用世帯の割合(以下グラフ)をみてみると、全世帯でネットショッピング利用世帯は年々増えてはいるが、60代以上はその割合はかなり小さい。

これまでみてきた年齢別の物価上昇率の差は品目ごとの支出の割合から算出されており、どの世帯も同じ品目を同じ価格で消費していることになっている。ただ、ネットショッピングの利用率を見てもわかるように、若年層と高齢者では消費行動が異なる。たとえば、同じテレビを買うのであっても、若年層は店頭価格だけでなく、ネット店舗の価格とも比較を行うことで、より低価格で購入することができるだろう。一方、ネットショッピングを利用できないとなると、インフレのダメージをより受けやすくなる。実態としては、これまでみてきた以上に、物価上昇率の格差が広がっている可能性も高い。

こうして物価上昇に直撃された高齢者たちが、生活に深刻なダメージを受け、すでに消費を減らしているという現実もある。

次の表は、13年~17年の「世帯年齢別の実質消費支出の増減率」を示したもの。

どの世代も消費支出はマイナスで、水色の名目消費支出で見ると39歳以下が最も減少幅が大きいが、消費者物価指数の要因を加えてみると、60歳以上の減少幅が最も大きくなることがわかる。

公的年金を受給する高齢者世帯の半数以上は、所得が年金のみである。現役世代は物価が上昇しても、賃金が上がっていれば購買力を維持できるが、所得が年金しかない高齢者の場合、マクロ経済スライドが発動されたことにより、物価が上がっても所得が十分に増えない厳しい状態に置かれる。

年金が増えないのに、ひたすら物価上昇の直撃を受けて、消費を削らざるを得ない。これが日本の年金暮らしの高齢者の残酷な現実なのである。