# 日本経済

デフレ大国ニッポンで「インフレに苦しむ老人」という残酷な現実

知られざる「物価格差」の正体
白波瀬 康雄 プロフィール

13年といえば、アベノミクスが本格始動した年だ。日銀総裁に黒田東彦氏が就任し、年率2%の物価上昇目標が掲げられた。異次元の量的金融緩和を実施して円安が急伸、物価が徐々に上がり始めた年でもある。

さきほどの図表では、円安や消費税率引き上げの影響から14年は全世帯で大幅に物価が上昇したあと、円高や原油安で物価が低位に抑えられた15年~16年を経て、17年にふたたび上昇に転じていることがわかる。その期間に注目すると、39歳以下は15年~17年の期間、物価指数は横ばい(15年=103.7→17年=103.8)であるのに対して、60歳以上では上昇基調(15年=105→17年=105.8)を続けていることがわかる。この間、高齢者は苦しい生活を強いられているわけだ。

 

高齢者ほど「物価上昇率の高いもの」を買っている

それにしてもなぜ、こんなことが起こっているのかというと、高齢者ほど「物価上昇率の高いもの」を消費していることが背景にある。

ここで、以下の図表2をご覧いただきたい。

これは、「食料」、「住居」、「光熱・水道」などの10大費目のうち、「60歳以上」と「39歳以下」とでは、どこに生活支出が多いのかを算出したうえ、各費目の物価上昇率を算出。それをもとに、若者と高齢者のあいだの物価上昇率の差が開いた要因を分析しているものである。

物価上昇の差が生じる要因は2つあり、一つは生活支出のうち、どの費目により多くの支出をしているかという「ウエイト要因」。もう一つは費目の中でどのような品目を選択しているかという「品目選択要因」。たとえば「食品」の品目のうち生鮮食品と外食ではインフレ率が異なるので、それが差を生じさせる一因となるといった具合である。

以上を踏まえて「ウエイト要因」から見ると、高齢者ほど物価上昇率の高い「食料」への支出が多く、物価上昇率の低い「交通・通信」への支出が少ないため、物価上昇のダメージが大きくなっている。10大費目全体で見ればこの「ウエイト要因」だけで、高齢者と若者の格差は0.6%も開いている計算になる。