アメリカを壊した黒幕「26165部隊」「74455部隊」の謎

彼らがトランプを大統領にしたのかも…
海野 素央 プロフィール

有権者のデータまで盗んでいた?

筆者にとって最も衝撃的だったのは、GRUのサイバー部隊が、クリントン陣営の「フィールド・オペレーション」に関する情報が保存されたコンピューターも標的にしていたということです。フィールド・オペレーションとは、文字通り選挙における「地上戦」、つまりは戸別訪問を指します。

クリントン陣営は、2008年の大統領選挙でオバマ陣営に戸別訪問で敗れた教訓を活かし、2016年の選挙ではオバマ大統領の元選挙スタッフを雇い、戸別訪問にかなりの時間とエネルギーを費やしていました。しかも、オバマ陣営からデータを買い取り、地上戦ではトランプ陣営に対して有利な戦いを展開していた、と思い込んでいたのです。

しかし実際のところは、こうした民主党陣営のデータはロシアによってハッキングされ、トランプ陣営に渡り、その勝利に大きく影響した可能性があります。

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2016年当時、筆者は研究の一環としてクリントン陣営に入り、11州で3400件以上の戸別訪問に駆け回りました。選挙期間中は、いつトランプ陣営の運動員と遭遇するのか、と期待と不安を抱えながら、一つ一つの家を回っていたのです。ところが蓋を開けてみると、トランプ陣営の運動員と鉢合わせしたのは、サンフランシスコでの戸別訪問のわずか1回のみでした。

いま考えると、ちょっと不自然です。おそらくトランプ陣営は、クリントン陣営が戸別訪問で収集した有権者の情報を把握していたので、「クリントンとトランプ、どちらに入れるか迷っている」という有権者を狙い撃ちし、効率よく攻勢をかけることができていたのではないでしょうか。

いずれにしても、クリントン陣営はロシア政府を相手に選挙戦を戦っていたことが、2月16日のFBI(米連邦捜査局)の起訴状に続き、今回の起訴状からも改めて立証されました。これでは、クリントン陣営は事実上、ロシア政府と選挙戦を戦っていたようなものです。

 

こうしたロシア政府による選挙介入は、過去の出来事ではありません。今も継続して行われているのです。山場はもちろん、今年11月に行われる中間選挙です。

民主党のクレア・マカスキル上院議員(ミズーリ州)は、7月28日に「ロシアのハッカーが、私の事務所のコンピューターのネットワークに侵入しようとしたが、失敗した」との声明を出しました。

ロシア政府がマカスキル上院議員をサイバー攻撃の標的にするのは、ヒラリー・クリントン元国務長官とマカスキル上院議員が近い関係にあること、今回の中間選挙でミズーリ州が重点州とされていること、マカスキル上院議員が上院軍事委員会に所属していることが理由と考えられます。要するに、議員に対するサイバー攻撃で、トランプ大統領は選挙を有利に戦え、ロシアは米国の軍事機密にアクセスできるという、利害関係の一致があるのです。

トランプ大統領とプーチン大統領が蜜月をアピールした米露首脳会談を経て、いま、アメリカでは多くの有権者が「トランプ陣営とロシア政府は、『共謀者』である」という認識を持ちつつあります。

こうした中、トランプ大統領の弁護士チームを率いるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、「共謀は犯罪ではない」とインタビューで述べ、続いてトランプ大統領も自身のツイッターに同様のコメントを投稿しました。

「ロシアゲート」の捜査が中間選挙を待たずして核心に入り、トランプ大統領が守勢に回っていることは確かです。