辞任表明・山根会長の「剛腕と功罪」~プロボクシング界重鎮が明かす

プロ・アマの垣根はなくなるか
岩崎 大輔 プロフィール

壁は壊せるか

当然、拓大と当時の日本アマチュア連盟の川島五郎会長は激怒。それまでは五輪候補の選手にプロ側の優秀なトレーナーが指導するなどプロとアマの交流はあったが、「具志堅騒動」以来、両者は絶縁状態となる。

「日本アマチュア連盟の川島五郎会長と親父は仲良くやっていたようです。五輪を目指す途中で選考に漏れた選手をプロに引き抜く、ぐらいは問題なかった。けれども具志堅さんはモントリオールでメダル獲得を期待された、アマ界の本命。

親父は具志堅さんに惚れ込み、五輪が終わるまで待てなかった、と話していましたが……。学費免除、といわれていたのに、なぜか入学金の払い込み通知が来ていたことで、具志堅家が弱っていたことも関係したようですが」

 

野球やサッカーなどの世界では、五輪でメダルを獲るために、プロアマの垣根を取っ払うための努力が続けられている。しかし、ボクシングではその議論の場さえ設定されていないという。

昭和から平成へと時が流れ、アマ側は川島氏から山根氏へ会長が代替わりし、プロ側も世代交代が進んだ。その過程で、両者の雪解けのチャンスはあったという。

「6年前のパーティー会場で、山根会長が私を手招きし、『自分(関西弁でお前)の親父よう知っとる。何度も飯食った』と声をかけてこられた。そんななかで、2016年のリオ五輪の前、プロアマ融和の機運が高まったことがあったんです。でも、なぜかご破算になった。真相はわかりませんが、山根会長の『プロには五輪の敷居を跨がせん』と鶴の一声でご破算になったとも聞いています。

東京五輪でメダルを獲れば、ボクシング界全体にスポットライトが当たり、ボクシング人気の復活にもつながる。山根会長が退任されたら、またプロ・アマ連携の機運も高まるのではないか、と期待しています。

引退した元プロ選手が一定の研修を経て、アマチュアの指導者として認定されれば、母校などのボクシング部で指導者になれる。そうすると、学生も集まってくるでしょうし、プロの技術がアマに伝われば、全体の技術向上にもなるのでは」

危機をチャンスに変える……そんな大胆な決断を、ボクシング業界は下すことができるのだろうか。