遠く離れた老親をどう介護するか──認知症専門医が教える1つの答え

「認知症初期集中支援チーム」の活用を
伊古田 俊夫 プロフィール

災害時の認知症支援にも活躍

認知症支援を「初期集中チーム」で行う試みは、意外なところでも効果を発揮しています。

この7月に甚大な被害をもたらした西日本豪雨災害の現場です。多くの方々が避難所への避難を余儀なくされましたが、なかでも認知症の人は、生活環境が変わると予想できない症状を示すことがあり、家族の苦しみは増大します。

岡山県の倉敷医師会では、今回の豪雨災害を受けて医師会の活動として「認知症初期集中チーム」を立ち上げ、避難所や医療機関を巡回する活動を展開しました(7月25日付「山陽新聞degital」)。素晴らしい活動を行った倉敷医師会に、同じく認知症初期集中チームに携わる者として心から拍手を贈りたい気持ちです。

2011年の東日本大震災をはじめ、近年続発する大災害によって、避難生活を強いられるケースが増えています。高齢者人口の増大に伴う認知症の人の増大を考慮に入れて、災害時における認知症支援対策を構築すべき時期が来ていると考えます。

災害時にはまず、救命救急医療が優先されますが、1〜2週間後には次の支援が必要となります。認知症支援もそこに含まれますが、その場合は、倉敷医師会が試みたようなチームによる支援が主体となるでしょう。

災害時に避難所で苦しむ認知症の人やその家族を支援する「災害時認知症支援チーム」を平時から整備しておくことが大切になります。単一の医療機関を母体にチームを結成する場合とともに、地域の医師会や介護事業団体、自治体が協力してチームを置くことも必要でしょう。緊急事態に対応するためには、チームのつくり方を事前に検討・合意し、訓練などもしておくべきと思われます。

「災害時ショートステイ」体制の充実を

【写真】支援の手photo by iStock

災害時認知症支援チームの構築にあたっては、すでに全自治体に設置されている「認知症初期集中支援チーム」の活用・援用が有用と考えられます。既存の認知症初期集中支援チームにおいても、災害時を想定した訓練を日ごろから行うなどの準備が求められていくことになります。

さらにもう一つ、「非」災害地の施設から援助を受けて行う「災害時ショートステイ」も、必須の課題となると思われます。

認知症の人や家族にとって、避難所での長期滞在は多くの困難をもたらします。家族の希望や初期集中支援チームの判断に基づいて、被害を受けていない近隣地区の医療・介護施設等で「災害時ショートステイ」が利用できるようになれば、被災者に大きな安心を与えることになるはずです。

認知症初期集中支援チームは、社会脳が侵されるという認知症の病態に応じた合理的な施策であると思われます。遠く離れた実家の親御さんがなんとなく心配になってきたというみなさんには、ぜひとも知っておいていただきたい公的制度です。いつの日か、必ず役に立つはずです。

参考文献:伊古田俊夫『社会脳からみた認知症』(2014年、講談社ブルーバックス)

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社会脳からみた認知症

【書影】社会脳からみた認知症

伊古田 俊夫 著

「認知症+予備軍1000万人」時代に備える。暴力、無視、抵抗――。介護者泣かせの行動はなぜ起こるのか? 記憶障害や知的能力の低下だけではとらえきれない、患者の「心の変化」とは? 現役世代を襲う「若年性認知症」の背後にひそむ「脳の病変」とは? 早期発見を可能にする知識とは? 症状を理解し、介護の負担を軽くする新しい視点を、専門医がやさしく語る。

脳からみた認知症

【書影】脳からみた認知症

認知症を、「不治の病」や「避けられない老化現象」ではなく、「早期発見して治すことが可能」な「脳の病気」としてとらえ直す。

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