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遠く離れた老親をどう介護するか──認知症専門医が教える1つの答え

「認知症初期集中支援チーム」の活用を
地方で暮らす老親を心配しながら都会で働いている、という人も多いだろう。増して、その親に認知症の症状が疑われ始めたら……。

離れて暮らす家族を見守るすべはないのか。

地域医療・地域介護の最前線で奮闘する認知症専門医で、『脳からみた認知症』『40歳からの「認知症予防」入門』などの著書がある伊古田俊夫氏の特別リポートをお届けする。

ちょうど帰省の季節。久しぶりに顔を合わせる親との今後に思いを馳せながら、ぜひご一読いただきたい。

【写真】車椅子で介護を受ける高齢者photo by istock

「オレの金を盗んだだろ!」と怒鳴る老父

「オレの金を勝手に使ってるだろ!」
「郵便局がオレの金を勝手に使ってて、けしからん!」
「こないだお前が帰ってきたとき、金がなくなった。盗っただろ! もう帰ってくるな!」

埼玉県K市に住むAさんは、北海道で一人暮らしをする87歳の父親からかかってきた一方的で怒鳴るような電話に驚き、ショックを受けました。

そういえば昨年、帰省したときに、入浴もあまりしていないようで足は汚れ、つじつまが合わない話を平然とすることが気になっていました。部屋の中を片付けようとすると「余計なことするな!」と怒られ、そのままにして帰ってきていたのです。

被害妄想的な言動がみられ、「認知症」という病名が心に浮かびました。以来、多忙な仕事の合間にも父親のことが気になり、心配で眠れない日もありました。

はじまりは一本の電話から

ある日、Aさんは新聞で「認知症初期集中支援チーム」という言葉を目にしました。内容はよくわからないにもかかわらず、「これだ!」と直感し、気づけば父親の住む町の役場に電話をしていました。電話は地域包括支援センターの保健師につながり、父親のようすをていねいに聞いてもらえました。

「なんとか親父を診てもらい、認知症なら必要な対策を講じたいのですが……?」

「わかりました。まずは私どもで訪問してみます。お父様への電話が可能なら、一応役場の保健師が挨拶に伺うと伝えてみてください。必要な場合には医師の診察も検討しましょう」

「病院に行くのは難しいと思いますよ。一度病院へ行くよう説得しましたが、まったく相手にされず、言い争いになってしまいました」

「そうですか。家庭訪問による医師の診察も可能ですから、まずはこちらで動いてみます。息子さんも帰省される際には、ぜひご一緒に相談させてください」

電話を終えたAさんは、心のつかえが取れた思いでした。電話一本で、遠く離れて暮らす親父の相談ができるんだ……、と。