地方への移住者が苦悶する「ゴミが出せない」という大問題

地方創生の鍵となるはずだが…
佐々木 俊尚 プロフィール

この土地は、京都に海産物を運ぶ主要な街道の一つにも面していた。かつての日本海が流通の中心的なルートであったことを振り返れば、開放的な人がとても多いのもうなづける。歩いていると、いろんな人が挨拶の声をかけてきていただける。美浜町役場や地元の人たちとの関係も、「ふるさと福井サポートセンター」代表で私の友人でもあるたいちゃんこと北山大志郎が最初に間に入ってくれて、とても良好な関係になった。

ただ住み始めて一点だけ、驚くべき問題に気づいた。それは「ゴミを出せない」ということだ。

美しい空気、天然のクーラー、緑に囲まれた風景・・・自然との暮らしを夢見て移住し、生活に根差したゴミ捨てができないとなると……Photo by iStock

ゴミ出しのために「町内会に入らなきゃ」

わが家から100メートルほどのところには、道路沿いにゴミステーションがある。このゴミステーションの所有者は町内会で、会員にならなければ利用できない。実際、ゴミステーションには白いペンキを塗った札が設置されていて、そこにゴミステーションを使える世帯主の名前がリストとして書かれている。つまり町内会に入らなければ、ゴミを出せないのだ!

 

町内会に入ればすむ、という話ではある。しかし町内会への加入は住民の全会一致が必要で、ハードルはかなり高い。そもそも移動生活者である私は、美浜町に住民票さえ移していない。住民票のない人間が町内会に入れるのか。さあどうするか、という話になったのだけれど、私の住んでいる家は大家さんがとても親切な方で、こう申し出ていただいた。「収集日にうちに持ってきていただければ、軽トラックで一緒に出してあげますよ」

このご厚意をありがたくいただいて、いまは大家さんの家の前に駐めてある軽トラックの荷台に、ゴミ出しをしている。感謝の言葉もない。

とはいえ、一般論としてとらえれば、どこでもこういう対応をしていただけるわけではない。ついでに付け加えておくと、どこの地方でもよそ者がゴミ出しできないわけではない。美浜町でも、地域が違えば町内会に入っていなくてもゴミを出せるところもある。また他の地方だと、地域のゴミステーションはNGだが、町役場に設置してあるゴミ集積場であればよそ者でも大丈夫というところもあるようだ。

ゴミの回収と処理は行政サービスだが、ゴミの集積所は地域共同体のコモンズ(共有物)であるというねじれがあって、このゴミ出し問題をややこしくしている面もある。