官僚が親を入れたがる特養の「知られざる不公平」

特養に入りづらい人たちの理由
長岡 美代

低所得者が特養に入りづらい理由

かつては「多床室」(4人部屋)が主流だったが、2003年度から厚労省は新設の特養を「ユニット型」と呼ばれる個室を基本としたので、10人程度を単位に共用のリビングを設けなければならなくなった。

その分、建設費が嵩み、入居者が負担する費用に跳ね返っているからだ。特養の居室の7割超をユニット型が占める。

もちろん、低所得者(住民税非課税世帯)には費用の軽減策(補足給付)があるが、施設にとっては一般所得者に入ってもらったほうが収入が増えるので有り難い。

下の図は特養入居者の所得段階別の割合を示したものだが、2013年9月末には16.6%だった一般所得者(円グラフにおける第4段階)が、2016年9月末には25.9%に上昇している。およそ入居者4人に一人の割合だ。

*厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」のデータを筆者が集計
注:入居者が住民税非課税でも、配偶者が課税されていたり、単身で1000万円超、夫婦で2000万円超の預貯金がある場合は、第4段階となる。

ユニット型は平均的な有料老人ホームと比べて豪華で、なかには床に大理石を用いているところもある。ゆとりのある所得層にとっては、おトクな施設と言える。

さらに、一般には知られていないが、ケアの面でも有利になっている。

 

公務員が親を入居させたがるのも納得

特養は入居者3人に対して、介護職員を常勤換算で一人配置する「3対1」が人員基準となっているが、ユニット型はそれに加えて、入居者10人ごとに日中、常時一人以上の介護職員を置かなければならない。

きめの細かいケアを提供するためで、夜間は入居者20人ごとに介護職員が一人付く。そのため、実際には「1.5対1」程度の職員が必要で、多床室や民間の老人ホームと比べてかなり手厚い。厚生労働官僚などお役人が親を入居させたがるのも頷ける。

ただ、人材が不足するなか、施設にとってはより多くの介護職員を必要とするので重荷になっているのも確かだ。やむなく高い費用を払って人材派遣会社を頼らざるを得ないので、収支も悪化している。特養の3割が赤字に陥っているというデータもあるくらいだ。

民間の老人ホームが急増するなか、個室はともかく、特養だけに手厚いユニット型を求める理由はもはや見当たらない。

低所得者が入りづらくなっているだけでなく、生活保護受給者が入居できないというのも不公平だろう。特養を運営する社会福祉法人にはあらゆる税金の支払いが免除されているが、その役割を改めて見直すべきだろう。

この先もしばらくは介護ニーズの増加が見込まれるが、民間の動向や足下の需要を踏まえながら、施設を計画的に整備することも必要である。

待機者がいるからといって、多額の公金を投じてやみくもに特養をつくり続けるだけでは、人材不足に拍車がかかるだけで、既存施設の存続さえ危うくしかねない。

このままでは、約800万人いるとされる団塊世代が75歳以上となる2025年まで持ちこたえられそうにないことを、政府も自治体も自覚すべきである。