AIは医師国家試験を突破できるか~医学部受験の専門家が考察

すでに大学生レベルというけれど
原田 広幸 プロフィール

医師国家試験、受かります

では、AIは医師国家試験に合格し、医師になれるのか。

日本では、6年制の医学部において座学と実習等からなる必要な単位を取得し、6年次の2月に行われる医師国家試験で合格してはじめて、晴れて「医師(Medical Doctor)」の資格が与えられる。

卒業後は、2年間の臨床研修にはいり、「研修医」となるが、研修中であっても、すでに医師としての身分を与えられている。アメリカの医療ドラマなどに出てくる、「インターン」の医師とは異なるので注意を要する。研修医は、「医師」である。

 

さて、平成30年の医師国家試験の合格率は、平均で90.1%であった。つまり、医学部に入学さえできれば、そして、ちゃんと勉強をしてさえいれば、ほとんどの学生が合格できるということだ。

もちろん、一部の大学では、国家試験合格率を高く維持するため、成績不良の学生を留年させ、学力をつけてからでないと、受験をさせないという医学部もある。しかし、そういった留年した学生も、1、2年を追加すれば9割の中に入れるわけだから、全体として合格率は高いと考えてよい。

では、AIは、その9割に入れるのか?

医師国家試験は、400題出題され(平成30年試験)、必修問題、一般問題、臨床実地問題に分かれている。AIにとって難しそうなのは、臨床問題だ。その出題例を見てみよう。

67歳の女性。不眠を主訴に来院した。1ヵ月前から夜になると両足に虫が這うような不快な感覚を自覚していた。この不快感は安静にしていると増強するが、足を動かすことで軽減する。かかりつけ医からは経過をみるように言われたが良くならず、足を動かしたい欲求が強く寝つけなくなり受診した。四肢の筋トーヌスは正常で筋力低下を認めない。

腱反射は正常で、Babinski徴候は陰性である。感覚障害と小脳性運動失調とを認めない。歩行に支障はなく、日常生活動作にも問題はない。血液生化学検査では血清フェリチンを含めて異常を認めない。
適切な治療薬はどれか。

a β遮断薬
b 筋弛緩薬
c 抗コリン薬
d ドパミン受容体作動薬
e アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

問題文を見ると、専門用語がたくさんあって難しそうに見えるが、いくつかの条件文が並んでいるだけである。高校生の普通の程度の頭があれば、文意は取れる。

「かかりつけ医からは経過をみるように言われたが良くならず,足を動かしたい欲求が強く寝つけなくなり受診した」など、個別性(具体性)が認められる表現があるが、その他の箇所は、AIでも読めそうな一般性の高い表現である。

一般性の高い表現であれば、データベースとの照合が可能になるはずで、そこから、適切な答え(適切な治療薬)を選ぶことができるだろう。

AIが、医学部で行われる実技試験をどのようにクリアするかという問題はさておき、医学部合格者(入学者)の90%以上が、医師国家試験に合格できる現状から考えると、学力だけであれば、AIは国家試験を突破できると結論付けざるを得ない。

つまり、AIが医師になることは、なんとかできそうではあると思うのだ。

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