「美人病」とうつ病を患った二人の漫画家が赤裸々に語る病気のこと

漫画にしないで死ねるかという話
田中 圭一, いさやま もとこ

恐怖で痛みを感じない治療って何!?

いさやま: 目玉が出たのはね、ショックでしたよ。

治療もとんでもない恐怖。両目それぞれ部分麻酔で結膜を切って目の奥の筋肉なんかに注射するんです。看護師さんから治療の説明をされたとき、「恐怖で『ギャア』となっているので痛みはあまり感じません」と言われて、実際そのとおりでしたよ。

田中: たしかに目玉出るんじゃないかって恐怖は僕もあったけど……、出る人と出ない人がいるんですよね。

いさやま: 田中さんノースモーカーだからね。私のようなスモーカーはバセドウ病眼症が出る確率がすごく上がるらしいの。書名で「美人病」って謳っていますが、それは最初だけで。

田中: そんな生やさしいものじゃない。

いさやま: メガネのレンズに眼球がくっついちゃんですよ。だからレンズの真ん中が自分の目の油膜で曇ってて、いつも拭いてる。ものが複数に見えたり、眼精疲労で頭痛・肩こりが全身に及んで。つらかったのは見た目が変わるので、ウィンドーやスーパーの野菜売り場の鏡も見られなかったです。あのころ下向いて歩いていました。

田中: いっぱいホルモンが出ているせいで、目が出るの?

いさやま: 私はバセドウ病によって免疫異常で目が出ました。眼球の周辺が腫れて目を押しだすんですよ。

 

発症の原因は夜中1時に会議する会社

田中: なぜ甲状腺の病気になったのか、心当たりが僕にははっきりあるんです。職場のストレス。かかる前、おもちゃメーカーにいて、地方の営業所でのんびり営業やっていたら、突然本社勤務に戻されて。本社は超ブラックなんですよ。

なぜみんな会社から歩けるくらいのところに住んでいるのかなと思ったら、なんてことはない、電車のある時間に帰れないからなんです。タイムカードの記録が午前2時とか4時とかだから。

当時僕は松戸に住んでいて、会社のある葛飾から、電車のある時間に帰らざるを得なくて後ろめたいわけですよ。みんな働いていて、夜中1時に会議始めるとか言っているし。

それでゲーム会社に転職することにしました。その直後に発症したんで、恐らく前の会社でのストレスが原因してたんですよ。

僕のアシスタントの男性も発症する前、漫画家で食っていけなくて、一念発起して秋田の空き家を突然借りて、自分のイラストを極めるといって山籠もりしたんです。

西日本に住んでいた人が雪深い秋田なんかに半年住んじゃったもんだからストレスたまって、帰ってきたらなっちゃったんですよ。過度なストレスは絶対引き金になると思いましたね。

漫画家の江口寿史さんもバセドウ病にかかって、その通っている病院に、石垣島に引っ越して半年したら、治ったおばあちゃんがいたって江口さんに教えてもらったことがありますよ。

いさやま: ストレスにも反応しちゃうホルモンって厄介なもんですよね。

私は甲状腺の機能が低下したとき、やる気減退ばかりか、感情がなくなるっていうところまでいって、もうぼんやりと寝てるしかない。24時間ぼんやり。

それで寒い。6月ごろにホカロン張ってました。汗もかかなくなるし、潤いなくなるから乾燥してパサパサ。本当に脂っけ抜けるって、まさにそれ。今思うと不思議な経験だなって言えちゃうけど、当時はどうなってんの私って。

田中: そうですね。多くても少なくても精神面に影響するじゃないですか。

低下すると今までテキパキできてたのが、何もかもやる気なくなる。周囲は何やる気なくしてるのって言いますよね。当時理由がわからなかったから、「やばいな、やんなきゃ、でもできない」。

周りがわかってくれてないのはしょうがないと言いながらも、わかってほしいですよねそういうのって。

一方自分も「人の感情って、心が生み出しているというより脳内物質が作ってんじゃん」とわかると、機嫌悪くて怒っている人を見ても、ああ悪いこと言っちゃったかじゃなくて、脳内物質の何か足りてないんじゃないか、栄養とって睡眠とったほうがいいんじゃないかって思うようになりましたね。

⇒後編へ続く

『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』  (角川書店)
 
今秋、ドラマ『うつヌケ』田中直樹主演で配信予定
 
『あたい、美人病になりました! バセドウ病4年生のぼやきまくり日記』(講談社)