あまり知られていませんが、日本では相続税を必要以上に多く支払ってしまっているケースがたくさんあります。そうした場合、後から還付請求という手続きをとることで、納め過ぎた相続税を取り戻すことが可能です。
ただ、どういったケースであれば税金を取り返せるのか、どのように税務署と交渉すればいいのかということについて、プロの税理士でもそれをきちんと理解している人はあまり多くありません。そのため、相続税を多く支払ってしまっていること自体に気がつかなかったり、気がついてもどうしていいかわからずに泣き寝入りするケースがほとんどです。
今回は、実際に1億円近くの税金を払いすぎてしまったあとで、これを取り戻したお客様のケースを紹介します。
愛知県にお住いのSさんは、中核市の中心部に多数の土地を所持する大地主。コンビニエンスストアやショッピングモールなどの商業施設にも土地を貸しており、かなりの収益を得ていたようです。
それらの土地は、亡くなったお父様からSさんが相続したものでした。Sさんには2人の妹がいましたが、ほとんどの遺産を長男であるSさんが相続しました。
Sさんのお父様が亡くなったのは2014年のこと。葬儀が終わって少し落ち着いた頃、Sさんは付き合いのある税理士に「相続税の申告をしなくてはいけないが、どうすればいいか」と相談しました。
一般的なサラリーマンからすればなじみのないことでしょうが、地主さんの多くは常日頃から税理士と付き合いがあります。例にもれずSさんも、毎年所得税の申告を依頼している税理士にまず相談したそうです。
「税理士なんて、誰に頼んでも変わらないはずだ。新しく税理士を探すのも手間だし、よく知っている税理士に頼むのが一番良いだろう」。そう考えたSさんは、そのまま付き合いのある税理士に依頼することに決めたのです。
しかし、これが大きな落とし穴でした。